第五章 言葉だけじゃだめだよね

第32話 こころのよわさ

――強さがわからぬ、誰かのこころ――



 自分に出来ることはないの。



 急にどうしたの。



 だって、何も言ってくれないじゃない。


 

 恥ずかしさで震える声は届いていたんだろうか。



 疲れた目をしたあの人の手助けがしたかった。



 ずっと、何かを変えられる力が欲しかった。



 本当は、ただ頼りない存在ってだけの自分に苛立っていた。



 あの人にとって、自分はどういう存在だったんだろう。



 どうすることが正解だったのか。



 ただ、優しく笑ってるあの人を、力強く支えてあげられる存在になりたかった。



 もっと、自分を頼って欲しかった。



 でも、結局そんな存在にはなれなくて。



 言葉だけの過去になってしまって。



 今も後悔だけが残って。



 今もこの胸を締め付けて、縛られて、何年たっても、だめで。



 自分でも分かってるんだけど、やっぱりだめで。



 あんなの聞いたから、思い出しちゃったよ。



 第五章「言葉だけじゃだめだよね」開始――




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