第三章 心配しないで

第16話 こころのまよい

――その場に留まる、誰かのこころ――



 あの時、あの人はどんな気持ちでいたんだろう。



 どんな気持ちで、それに向き合っていたんだろう。



 誰しも大人になれば文句も言わず、目の前のことに全力を尽くさなきゃならない。

 それはわかってる。



 でも、どこかで無理はしてなかったのかな。



 どこかで弱音を吐くのがみっともないって、強がっていたんじゃないかな。



 本当の気持ちは別のところにあったんじゃないの。



 誰にも悟られないように、その本音や弱さを隠していただけじゃないの。



 その弱い姿を、見せてくれない側の人って、どうすればいいかわからないものだよ。

 頼りない存在って事実だけが、冷たく目の前に突き付けられるものだから。


 そんな、自分で作り上げた過去の幻影との対話がいつまでも続く。



 忘れたと思ったら、ふとした瞬間に、その問いが頭の中に浮かんで。



 いつまで、こんな自問自答が続くんだろう。



 きっと答えが見つかるまでだろうね。



 でも、正解も不正解も、そんなものないよね。



 だから、その答えは自分で見つける以外ない。



 第三章「心配しないで」開始――

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