第41話

〈ユウ視点〉





買い物籠にビールを入れながら

伊織の言葉を思い出した…




【ビールはサッポ○派なの!】




俺は家でのビールは基本キリ○しか

飲まなかったから、伊織にキリ○の缶ビールを

差し出すといつも「苦いよ」と文句を言っていた…




ユウ「・・・・・・」





3歩先に伊織の言う銘柄の缶ビールがあり

俺はそのまま歩いてソノ缶を手に取った…





ユウ「・・・・・はぁー…

  昨日忘れるって決めたばっかだろうが…」





手に取った缶ビールを棚に戻してレジへと

行こうとすると奥の通路に

伊織が歩いているのが見え伊織も俺を避けて

このスーパーへ寄ったんだと分かり

本当に終わったんだと理解した…





伊織が俺に気づく前に帰ろうと思い

早足でレジに向かって会計に並びながら

マンションの事を思い出した





先週の木曜日に退去の連絡をしたと

言っていたが取り消しの連絡はしたんだろうかと…





この辺りは駅も近く条件がいいから

空き情報がでたら直ぐに埋まるほどの

人気物件だから、もし後の入居者が決まれば

出ていかなくてはいけなくなり…

伊織は引っ越しをして…

もう…こんな風に会えなくなる…





会計を済ませて俺は出口には向かわず

売り場を歩いて…伊織を探した…

調味料コーナーで見つけた伊織は少し笑っていて

知り合う前に見ていた姿のままだった…





初めてこのスーパーに来たのか

全部売り場を見て回りながら

値段をチェックしていた





途中でレトルトカレーの棚の前で立ち止まり

一個手に取っては裏面の商品説明を読んでは

置いてを繰り返している姿に…





(・・・・全然変わんねーんだな… )





伊織は前と変わらず悩みながら

手にとって選んでを繰り返していて…

俺とのこの一ヶ月近くはまるで

なかった事のように楽しそうに買い物をしていて

買い物袋を握る手にグッと力が入った…





(・・・・未練たらたらは俺だけかよ… )





段々と伊織に対しての苛立ちが湧いてきて

前までは可愛いとすら思っていた悩む仕草も

今では(なげーよ)と言ってしまいそうだった…





しばらくして振り返った伊織は俺を見て

気まずそうな顔をして目線を逸らしている





ユウ「・・・渡したい物がある…」





そう言って本来なら明日

伊織と一緒に見ようと思って

買っておいた映画のチケットを渡した





どんなに伊織にイラだっても

ヤッパリ好きで…

どうしようもなかったから…




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