第3話:簡単なAランククエスト(Side:ゴーマン①)

「ハッハッハッ、スカッとしたぜ!」


俺はクソむかつくアスカ・サザーランドを追放してやって気分が良い。何もできない<荷物持ち>のくせに、いちいち人の剣術に口出ししてんじゃねぇよ。


「さっすが、ゴーマン。あたしもあいつのこと、めちゃくちゃ嫌いだったぁ。もっと魔力を練る訓練をやれとか言ってきてさ。お前なんかが何言ってるんだっつーの」


「私も皆さんに同感ですわ。いつも全回復の魔法で治すことを心がけていたのに、もっと簡単な魔法で治せとか口うるさいことを言う人でした」


「あいつは何かと、人の装備に意見することが多かったな。追放は英断だった」


パーティーメンバー全員に見限られるなんて、あいつはほんとに無能な奴だったんだなぁ。クックック、笑えるぜ。そんなゴミを追放するなんて、俺はやっぱりリーダーの才能があるということだ。


「これでゴーマン様方は、ますますご活躍されること間違いなしですな。ゴーマン様方のおかげで、このギルドは王国騎士修道会に目を付けられずに済んでいるというものです」


コモノンが揉み手をしながら言ってきた。ペコペコして俺たちの機嫌を取ろうとしている。


「はっ、そりゃそうだ。俺たちの活躍を見れば、修道会だって何も言えねえよ」


「ねえ、王国騎士修道会って何だっけぇ?」


バルバラが聞いてきた。こいつ、そんなことも知らなかったのか。


「王国直属の騎士団だ。彼らは冒険者のことを、良く思っていないと聞いたことがある」


説明しようとしたら、ダンが話してくれた。


「何でぇ?」


「モンスター討伐に値する力のない冒険者が多すぎる、と認識しているようだ。クエストに失敗した冒険者を助けることも多いらしい。彼らに言わせると、冒険者は命知らずの愚か者ということだ」


要するに、モンスターに返り討ちにされる奴らが多いということなんだろう。ましてやクエスト失敗なんて、それこそ冒険者としてやっていく能力が無い。そういうザコどものせいで、俺たちみたいな最強最高のパーティーまで迷惑がかかる。ちゃんと修行してからクエストに行けよ。


「ギルドについても冒険者の管理能力がない、クエストの適切な割り振りができてない、被害を冗長させている、とか言っているそうだ」


「ダン様のおっしゃる通りでございます。修道会には困ったもんですよ」


「そういえば、私がいた修道院にも彼らが来たことがあります。実績の出てないギルドや問題のあるギルドは、解体させることもあるって言ってました」


「ハハハッ、このギルドを解体されたら、私はもう路頭に迷うしかないですよ!まぁ、ここにはゴーマン様方がいらっしゃいますから、全然大丈夫なんですけどね!」


コモノンの言うように、このパーティーがいれば全く問題ない。むしろ、修道会なんかより俺たちの方が強い可能性まである。とそこで、俺はゴミアスカのことを思い出した。俺は安心したように言う。


「しかし、アスカ・サザーランドを追放して本当によかったな。あんなに無能な奴がいたら、それこそ修道会に目を付けられそうだ」


おまけにコモノンに頼んで、冒険者ランクもDランクにしてやったからな。この先冒険者としてやってくのはもう無理だろ。ざまーみろ、クソゴミカス無能……。


「ところでゴーマン、次のクエストはどうする?」


頭の中でゴミアスカを罵っていると、ダンが話しかけてきた。そうだ、次のクエストを決めるのもリーダーの仕事だ。


「あたしもそろそろ、ゴーマンみたいにSランクになりたいなぁ」


このパーティーは俺がSランクで、他のメンバーは皆Aランクだ。もちろん、クソ役立たずな<荷物持ち>のボンクラアスカはCランク止まりだったがな。いや、今はDランクか!ハッハッハッ!


「おい、コモノン。バルバラたちは後どれくらいでSランクに昇格するんだ?」


パーティーでSランククエストを受けるには、メンバーの半分以上がSランクでないと受けられないからな。リーダーとしては、こいつらも早くSランクになってほしいところだ。


「はい、ゴーマン様。Aランクのクエストをあと一回クリアすれば、皆様方Sランクになられます」


「あと一回!?いえーい、楽勝じゃん!」


「とうとうSランクになれるのですね!」


「思えば長い道のりだったな!」


Sランクのクエストともなれば、クリア後の報酬や名声は今までとは比較にならない。次のクエストは、こいつらにとっても記念すべきクエストになりそうだ。何てったって、クリアした瞬間にSランクになるんだからな。


「とりあえず掲示板を確認するか」


俺はパーティーメンバーと一緒に、クエストを探す。


「どれどれ……。おっ、ちょうどAランクのクエストがあるじゃないか。『ヤボクの森の沼地に棲みついた、スワンプドラゴンの討伐』よし、これにするか」


スワンプドラゴンは、その名の通り沼に生息するドラゴンだ。フン、ずたずたにしてやるぜ。


「スワンプドラゴンとかめっちゃ弱いじゃんっ!ラッキー!」


「これで、もはやSランク昇格は確実ですね」


「今すぐ討伐に行ってしまうか?」


「いいね、いいね」


「行きましょう。私も早くSランクになりたいです」


メンバーたちはすぐに、スワンプドラゴン討伐へ向かおうとする。


「まぁ待て、みんな。別にスワンプドラゴンは逃げたりしない。ここはしっかり準備して、確実にクリアといこうじゃないか」


早く昇格したいメンバーの気持ちもわかるが、ここはリーダーとして一度止める。いくら簡単なクエストといえど、やはり準備が必要だからだ。


「確かにな、ゴーマンの言う通りだ」


「そうね、今日はもう疲れてるしぃ」


「さすが、我らのリーダーは良く考えてらっしゃいますわね」


俺の素晴らしいリーダーシップにより、スワンプドラゴンの討伐は明後日になった。まったく、優秀すぎるリーダーというのも考えものだな、ハッハッハッ!

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