巫女のお姉ちゃん

小丘真知

予感

お姉ちゃんは巫女のアルバイトをしています。



でも、お姉ちゃんは変なのが見えたり聴こえたり、なんか分かっちゃったりするところがあるので、そんなバイトはやめたらって言ってあげたんですけど。

家から近いし割りもいいの一点ばりで、そのバイトをやってます。

お姉ちゃんってなんか、すごい損してるっていうか。

静かにしていれば美人でお淑やかに見えるのに、すごいおしゃべりだし。

よく笑う人って、可愛いとかゆうじゃないですか。

でも、お姉ちゃんはギャハハハっておじさんみたいに大きく口開けて笑うし。

勉強も運動もできる方なのにすごいおっちょこちょいで。

こないだも足がかゆいって屈んだ拍子に、机に頭突きしちゃって。

頭を切ってました。

ホッチキスされてましたよ、おでこ。

そういう人なんです。

で、そんなお姉ちゃんが霊とか見えたりするとどうなるかっていうと、すっごい慌てるんですよ。

なんか過呼吸みたいになって、どうしようどうしようみたいになって。

結局何もできないから、なんか「むりむりむりむりむりむり!」とか突然わーってなって、通り過ぎるのを待つだけみたいな。


いつだったか忘れましたけど。

なんかおかしい、なんか胸騒ぎするって、朝から家中をうろうろしている日があったんですよ。

お母さんも私も、お姉ちゃん落ち着きなよって声かけても全然だめで。

どうしようどうしようって言いながら、でもちゃんとご飯は食べて大学行って。

巫女さんのバイトに行ったみたいなんですね。


で、お姉ちゃんの話では、神社でその胸騒ぎの原因がわかったらしくて。


その日は社務所に居たそうなんですけど。

そしたらなんか、綺麗な女性が来たらしいんですね。

薄い黄色のロングコートを着た、おしゃれな感じの女性が境内に上がってきたなぁってなんとなく眺めてたら、急に悪寒がしたらしくて。

良く分からないけど鳥肌がすごかったって言ってて。

その女性をよーく見てみたんです。

そしたら、その女性の腰あたりに何かが巻きついているなって。

最初はスカーフか何かかなって思ったらしいんですけど、スカーフにしては厚みがあるし、なんか重そうなものを引きずっているようにも見えて。



そしたら


人だったそうです。



スウェット着た男の人が、両足でその女性の腰を挟むように絡みついていたんだそうです。



仰向けで、その女性をうっとりした表情で見つめてたんですって。



その女性気付いてないので。

確実に人じゃない、じゃないですか。




あれだ、ってなって。




お姉ちゃん直感したんですけど、でもどうしていいか分からなくてパニクって。

そのパニクっているところを神主さんが見つけてくれて、話を聞いてくれたんだそうです。

お姉ちゃんいわく、その神主さんも勘が鋭い方だそうで。

だからお姉ちゃんの話を聞いて、その女性を見てみたら



「なるほどこれか」



って、その神主さんもなんとなく気付いてたみたいなんですね。

神主さんがその女性に声をかけて、色々と説明したら思い当たることがあったみたいで、すんなりとお祓いを受けてくれたそうです。

その女性はここ半年ほど、体調が優れなかったりよく眠れなかったりといろいろあったみたいで、それで、通りがかったこの神社を訪ねたんだそうです。

それからは、その女性の不調とか眠れないとかが治ったらしいんですけど。


めっちゃ怖かったーって言いながら、その神社の近くの定食屋が美味しかったーって喜んでました。


神主さんが、気付いてくれたお礼みたいな感じで、なんか、焼肉定食をご馳走してくれたみたいなんですけど。




焼定サイコーギャハハハって笑ってました。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る