俺の部屋に入り浸る幼馴染は可愛いが、力士じゃない。

きょうじゅ

はっけよい

 突然だが、君には「異性の幼なじみ」というものがいるかね。


 俺にはいる。誕生の月が一ヶ月くらい違いの同学年、それで年はいまお互いに十九歳で、大学に上がるまではいわゆる「家が隣同士の幼なじみ」をやっていたのだが、同じ大学に入って同じ街に出てきた今は、「アパートが隣同士の幼なじみ」をやっている。


 彼女の名前は海野舞うみのまいという。ちなみに俺は北野不二きたのふじだ。俺は彼女をマイと呼び、マイは俺のことを「ふじくん」と呼ぶ。


 マイは小柄で、髪は黒髪をロングに伸ばしていて、そしていつも、ガーリーなファッションに身を包んでいる。つまり、服を着ている、ということだ。


 え、そんなことは当たり前だろうって? まあ、普通ならそうだろうな。だが、普通じゃない事情が少しだけあるんだ。それはどういうことかというと。


「ふじくーん。今夜もごはん作りにきたよ。どすこい」


 マイは俺の部屋の鍵を持っている。ので、上がりたい放題である。


「今夜のごはんは、ちゃんこ鍋だよ。どすこい」

「今日もかよ」

「だって、あたしは力士なんだから、ちゃんこを食べて強くならないといけないんだよ。どすこいどすこい」


 お分かりいただけたかと思うが、マイは女で、小柄で、黒髪ロングで、服を着ているし、つまり力士である要素は語尾以外にほとんど何もないにも関わらず、自分は力士であると主張して憚らないのである。

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