ダンジョン物語~酒場にて百物語~

夏伐

1

 数人の冒険者たちが照明を消した酒場に集まっていた。

 薄暗い中、蝋燭の明かりがぼんやりと暗闇を照らす。

 旅人から聞いたばかりの『百物語』をしようと盛り上がったのだった。ただ旅人の言っていた『怪談』が良く分からない。

 それでも酒の酔いもあり、皆で楽しくとりあえずやってみようと言う話になったのだ。



1、遊び人 さん



 じゃあ俺から。


 俺は生まれついての遊び人。職業だって遊び人だ。

 この間、仲間と一緒にカジノに行った。

 自分で言うのもなんだが俺は運が良い。

 持ち前の運の良さを発揮して、賭けた金の何倍もの金額をゲットした。

 そしてそれを何食わぬ顔をしてリーダーが受け取った。

 その金は戦士の装備代、みんなの宿代、魔法使いのオシャレ代に使われた。

 俺に何の言葉もかけずに。 

 もうあんな仲間放り出して田舎に帰りたいよ。

 でも、俺の田舎はとっくの昔に焼野原になってるしな。みんなは今頃、ダンジョンだろうなぁ。

 ……このままダラダラとこの町にいるんだろうなぁ、俺。

 


酒場の看板娘 さん

「遊び人さん! それ、ただの愚痴じゃないですかー! じゃあ蝋燭消しますね」


 あ、あんたの後ろにいる冒険者みたいな装備なんだよ。

 似てるやつらもいるんだな。まあ防具職人にも流行ってあるもんな。

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