スナイパー

~PM 02:16~


とあるビルの部屋にはカーテンが張られていた。

怪物はこちらを視認できないだろう。

ボルトアクション式のスナイパーライフルを3脚に固定すると机の上でなにやら紙を広げて書き始めた。

線と線がぶつかり合い、線の上を踏み越え、沢山の線がスラスラと書かれていく。

紙の横にはここのMAPだろうか?端末のディスプレイには高低差を示す点と線が広がっていた。


「…いや、ここもあり得るか…」


ペンの尻にある消しゴムでゴシゴシと線を消していく。

そして、ある程度出来上がり。仕上げに掛かったその時。


ドゴォン!


カーテンの奥で砂煙が盛大に舞い上がったのが見えた。

直ぐにスナイパーライフルのチャンバーチェックを行い、装填されている事を確認した。

スコープを覗いて銃を回転させる。

上下も合わせて砂煙の奥で黒い物体が移動したのを視認した。

頭にうろ覚えの書いた視界MAPから次の場所へとスコープが走る。

砂煙が晴れた場所だ。

そこを複数人が走ると怪物もそれを追い掛けて走る。

時差は0.8か0.9だろう。

そして速度から次の場所では時差は0.7~0.8。

トリガーに指を引っ掻けた。


「スゥ~ッ!」


全てが右の人差し指とスコープの奥に集中する。

グリップの冷たさが無くなり、肩の感触まで感じなくなる。

音も一切入らなくなり、全ては銃へと注ぎ込まれる。

そして、複数人が通るのを知った。

怪物が物陰から出るより前に、トリガーが、指に食い込んだ。

3脚が後ろに後退し、撃針が後退し、肩に結構強い衝撃がぶつかり、スコープが目の近くまで来る。

そして、その反動でスコープにはビルの壁が写った。

すぐに元の場所にスコープを合わせる。

しかし、サプレッサーから発生する硝煙のせいでどうなっているのかわからない。

スコープから目を離してカーテンを見る。

1部に穴が空いている。

次にサプレッサーを見た。

硝煙が薄れてきている。

それを確認したスナイパーはスコープを再度覗き込んだ。

そこには怪物の脚があった。

キラキラと太陽の光りを反射している。


「なんとか倒せたか…危なかった~。」


そして、地面に手を突いて座った。

大きなため息を吐くと床の冷たさを知った。

手汗が今さらながら滲み出た。

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