36 村を守りましょう(1)

 さぁ、ついに勇者達の元に行く時が来ました。村まではまだかなりの距離がありますが、いま勇者達がいるのは何も無い平地であり、近くに集落もない場所です。


 私にとっては都合のいい場所なので、いざ出陣です。


「みんな、行ってきます」


 みんな口々に心配と応援の言葉をかけてくれます。ありがとうございます、頑張りますよ。


「アダム、いい子にしてるんですよ。アーさん、フェンみんなを頼みますね」

「「任せろ」」


 やっぱりアーさんとフェンは頼りになりますね。ルールーやシルフィ、バレンタインも村を頼みます。


「それじゃあ、行ってきます」


 ゲートをぬけて、勇者達の戦列の正面に降り立ちます。


 突然現れた私に、かなり混乱しているようです。ですが、勇者の一言でみんな冷静さを取り戻してますね。


「何者だ……いや、まさか堕落の聖女か?!」

「堕落……まぁ怠惰な生活ではありますね」

「何を言っている?」


 生活面の話ではなかったようです。にしても、勇者はかなり若いですね。女の子を複数連れていますし、ハーレムというやつですか?


 唯一の男性の仲間は、ゲート越しに私に気付いていた小太りの人ですね。相変わらず、やる気のない表情です。


「堕落の聖女! 王都に混乱をもたらした罪は重いぞ! 今ここで殺す!」


 混乱をもたらしたのは間違いないですね。弁解はしませんよ。


「私を殺したあとはどうするのです?」

「決まっているだろう、お前が作った邪悪な村を焼き滅ぼすんだ!」


 その勇者の啖呵で、一気な濃厚な殺意をまとった魔力か戦場を包みます。


 私だけを狙うなら、軽く脅かすだけでしたが、村を狙うとなれば話は別です。


 二度と、村には近づけないよう身体に覚え込ませます。マーガレット、本気モードです。


「いくぞ! 《英雄の歌》!」

「動きを止めるわ! 《縛鎖の結界》」

「《水牢の呪い》!」

「《土精霊の子守唄》!」


 勇者の仲間が私に拘束魔法をしかけてきます。勇者がつかった魔法は味方の超強化ですね。


 たしかに、なかなかの魔法です。私でも同じ魔力量でこれほどの精度と効果を出せるかどうか……、まぁ、同じ魔力量ならですけどね。


「関係ありませんね」


「んなぁ?! 魔力だけで拘束魔法をはじき飛ばしただとぉ?!」

 

 魔力量に多大な差がありますから。にしても数が多いですね。少し怖がらせましょうか。


「どーん!」

「「「「うぎゃぁぁぁぁああああ?!」」」」


 魔力の塊を思い切り地面に叩きつけます。軽く地震を起こそうとしましたが、思ったより大きな揺れになりました。

 地面も割れましたし。


「……バケモノめ! なんの手品かは知らないが、正々堂々勝負しろ!」


 勇者がすごい勢いで突っ込んできます。魔力で防壁を……うわ、一撃で破られました。なんかすごい強化されてませんか?


 いや、違いますね。私が弱くされてます。いつの間にか魔法をかけられていたみたいです。誰でしょう? あぁ、あの小太りの人ですか。


 いい魔法です。他の人よりもずっと私との戦いに貢献してますよ。とはいえこのままではまずいので、助っ人を呼びましょう。


 ゲートを開いて、魔界に繋げます。


 私の予想だと、間違いなく出てきてくれます。


 勇者のはなった攻撃から私を守るようにして、ゲートから一匹の巨大な龍が出てきます。久しぶりですね、三仙龍のフォーレイさん。


『グハハハハハ! また出てきたやったぞ人間! こんどこそ食い殺してくれるわ! ってうお?!』

「召喚獣か?! 死ねぇ!」

『なんだこの人間は?!』


 よしよし。勇者はフォーレイさんに任せて、私は勇者の仲間を相手にしましょう。軍? あの人たちはさっきの地震で戦意喪失してます。


 早く終わらせて、みんなのいる村に帰りたいですね。

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