34 勇者が来ます

 新年明けましておめでとうございます。と言いたいところですが、悠長に挨拶をしている場合ではありません。勇者が攻めてきてしまいます!


「みんな、集まりましたか?」


 朝一で村の全員を集めました。いつになく真剣な眼差しでみんな私の話に注目してますね。ありがとうございます。


「結論を先に言います。勇者が私を討伐しに来るそうです」


 ぴきっ、そんな音がはっきり聞こえるレベルで空間が歪みました。これは、みんなほ凄まじい殺意と怒気が魔力に影響して空間が軋みましたね。


「勇者を殺ればいいのだな? 任せよマーガレット」

「アーさんの言う通りだ! 私が串刺しにする!」


 とっても殺気立ってますねみんな。私が狙われてるという部分に怒ってくれてるので、とても嬉しいのですが少し落ち着いて欲しいです。


「怒ってくれているのはとても嬉しいですが、少し落ち着いてください」


 あ、すごい勢いで静かになってくれました。みんな、いい子です。


「勇者は、王国軍と騎士団のほぼ全てを動員してこちらに向かってくるようです。かなりの戦力なので、この村も備えをしなきゃいけません」

「戦争の準備ですね?」


 違います。ルールー。


「戦争の準備ではないです。村は防衛に集中してください。あと、いざと言う時の避難方法も」

「では、防衛に徹するということですか?」

「いえ、そういうわけではありません。勇者と軍、騎士団は私が追い返します」

「「「?!」」」


 みんなに危険な目にあって欲しくはありません。今回は、とびきり強い勇者がいますから。万が一を考えると私が行くのが一番いいでしょう。


「それは駄目だ! 何かあったらどうするマーガレット!」

「そうです。マーガレット様がいなくなればこの村は立ち行かなくなります」

 

 すごい止めてきますね。心配してくれてありがとうございます。でも、私はこの村の代表として、この村を守る役目があるんです。


「アーさんは悪魔の代表、ルールーやシルフィが文官として働いているように、この村では一人一人が役割を持っています。そして、私の役目はこの村を守ることです。大丈夫ですよ、私強いですから」


 たぶん、勇者にも勝てると思います。軍や騎士は私からしてみれば吹けば飛ぶような存在なので気にしなくても大丈夫です。


 とはいっても、みんな心配そうな様子は変わりませんね。


「大丈夫です。もし負けそうになったらこの村に帰ってきます。その時は私を守ってください。ただ、それまでは私にこの村を守らせて欲しいんです」


 これは譲れません。ここを守ります。ここは私にとってとても大切な場所ですから。


 みんな、納得はしていませんが、私の意思が変わらないことも分かっているので危なくなったら即帰ってくるという約束をしました。


 あと、村の防衛を全力全霊で強化します。勇者がくるまで残り2週間ほどありますから、出来ることはあるはずです。


「マーガレット様、村の防衛はどのように?」

「私は軍事的なことはわからないので、形は有識者に任せます。設計図はできるだけ早めにお願いしまーー」

「もう出来ています」


 え? なんでもう出来てるんです? ふむふむ、いざと言う時のために考えていたと。優秀すぎません? 今回はとても助かるので、即使わせてもらいます。作ってくれた人には後でお礼を言いましょう。


「みんな、離れてくださいねー。魔法で一気に作りますから、巻き込まれますよ」


 設計図はかなり緻密なので、魔法で上手く作れるかは微妙です。ただ大枠を作ってしまえば後は悪魔さんたちに任せていいのでやってしまいましょう。


「そりゃ!」


 よし、出来ました。


「規格外すぎません?」

「ルールー、顎が外れそうになってますよ。アーさん、細かいところは悪魔さんたちにお願いします」

「……了解した」


 みんなに若干引かれてるような? 気のせいでしょう。それよりも、まだまだ防衛を強化します。


 私の平和でほのぼのした空間を守るために妥協はしません!


「次は、ゴーレムを作ります!」


 前、ラムさんがお酒の席で色んな魔法について語ってることがあったので、その時に話していた魔法を使いましょう。


「素材は……どうしましょう?」


 素材の強さかそのままゴーレムの強さになると言っていた気がします。


 みんなに聞いてみると、悪魔さんたちは魔核と呼ばれるものを大量に提供してくれました。

 ふむふむ、一年をかけて生成される純粋な魔力の塊なんですね。いいんですか? 貴重な品では……あ、そうでもないと。


 あと、カブさんが脱皮の時に剥がれた甲殻をくれました。


「マーガレットさん! これも使ってください!」

「これは?」

「僕と父さんと魔王様の魔核です!」


 とんでもないものを持ってきましたねマトン君。あなた達ほど高位の魔族が作る魔核って、すごい素材じゃないですか? 実際、鍛冶師さんと魔法具師さんが口をあんぐり開けてます。


「いいんですか使って?」

「僕もこの村を守る手伝いがしたいんです!」


 マトン君……ありがとうございます。ありがたく使わせてもらいましょう。


 大量の魔核を、カブさんの甲殻で囲むようなイメージで作ります! いでよ、ゴーレム!


 おおおお、すごい勢いで素材が消費されていきます。そして、現れたのは人型のゴーレムですね。思ったよりもかなり小さいですが。私より小さくないです? 


「……は、初めまして。お母さん」


 お、お母さん?!

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