21 ブッチャー団
「寒くなってきましたねー」
この地に来てから、3ヶ月くらい経ちましたか? 大分冬に近づいてきてる気がします。フェンのモフモフの毛皮に埋まって体を温めたいですね。
バレンタインによる戦闘訓練は大人相手にも行われています。効果は劇的なようで……悪魔達は全員が上級悪魔に変化し、一部はアーさんの一つ下である超級悪魔になったようです。
引きつった顔をした元冒険者の人から聞きましたが、小さな村では低級悪魔ですら全滅を覚悟し、中級なら町が、上級ならいくつもの街が滅ぼされる危険があるようです。
超級悪魔はそう簡単に生まれる存在ではなく、もしこの世界に受肉などしようものなら国との戦いになるそうです。
そんな存在よりも強いアーさん。少し見直しました。
「少しじゃなくてがっつりと見直して欲しいのだが……」
「あれ、アーさん、居たんですか」
「扉を叩いたのに返事がなかったから入らせてもらったぞ」
別にここでは防犯とか気にしなくていいですからねー。今も昔もそうですが、あまり私は物を持たないので盗られて困るものもないですし。
「お気になさらず、それでどうしたんですか?」
「キャラバンとやらが来たぞ。ルールーと元商人が対応してるが……」
アーさんが少し言いずらそうにします。あー、わかりました。
「揉めてるんですね?」
「正確に言えば揉めそう、だ。揉めなくとも、マーガレットがいなければ話が進まないだろう」
「一応私が代表ですからねー。アーさんも一緒に来てくれますか?」
何かあった時のため、アーさんを連れていきましょう。
自宅を出て、お客さん用に作っておいた迎賓館に向かいます。たぶん、ここで一番綺麗な建物です。
「あー? てめぇがこのバケモンの里の親玉か?」
なんですかこの金髪。私を人目見た途端それですか? なんか顔は良いんですけど、金髪なのも合わせて馬鹿王子を思い出します。めちゃくちゃイライラしますね。
というか、この人たちの見た目はキャラバンというよりも完全に賊ですね。馬じゃなくて魔物に馬車引かせてますし。コロシアム上がりみたいな人も多いです。
「おい、何無視してんだてめぇ!」
「うるさいですよ金髪、出会い頭に失礼なことを言わないでください」
「き、金髪?!」
そうです、あなたのことですよ金髪。なんで私もこうやって言い返しているのかと言うと、ルールーが泣きそうな目でこっちを見てるからです。ルールーは仕事は出来ますがこういう荒事は苦手ですから。
そんなルールーが泣きそうということは、ただの交渉じゃなくて荒事に持ち込もうとしたんでしょう? この金髪。
「てめぇ、俺たちを舐めてるのか?! 俺たちは天下の大義賊、ブッチャー団だぞ!」
「ダサいですね」
「ダサいな」
アーさんと声が揃います。ブッチャー団って、ダサくないですか? しかも天下の大義賊ってなんですか。義賊が天下に出ていってどうするのです、暗躍するものでしょう。
「てめぇ……もういい、ここの悪魔やエルフを俺様の配下に加えてやろうかと思ったが、ここまで舐められちゃあ仕方ねぇ。てめぇら、やっちまえ!」
あー、馬鹿ですね。多分ここの人達を戦力にできると考えてるんでしょうけど、貴方がたに従えられるような人達ではないのです。
動き出そうとした男たちに対して、アーさんは軽く指を鳴らします。それがアーさんの魔法発動方法です。効果は男たちの転送です。どこにって? 悪魔たちの住むマーガレット城です。生きて帰れますかね?
「な、なんで誰もいない?! 何があったんだ?!」
「……ルールー、このお馬鹿さん達はこれで全部ですか?」
「も、森の外にもいるそうです」
「そうですか。アーさん、そっちも捕縛しておいて下さい」
さて、この馬鹿金髪も捕まえましょうか。
私も、さっきのアーさんみたいに魔法を使ってみましょう。指を鳴らすだけです、パチンと。
「と、いうことで魔法で眠らせました。ルールー、大丈夫ですか」
「マーガレット様ぁぁぁぁぁぁ」
「んぐ……よしよし」
怖かったでしょうから、ハグを受け止めてあげます。かなり衝撃が大きかったですが。
さて、どうしましょうかキャラバンの人達。100人くらいいましたけど。
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