飽きたエロDVDは鳩避けにでも使え

ませがきぃ

第1話 円盤のサンドイッチ


 




 今、ブックオフの18禁コーナーに突っ立ってるんだけど、なんか周囲の目線が冷たいです。特に、女性の方々。シンク下でカサカサ音をたてる頭文字Gを睨むような目つきの貴女、見てはいけないものを見てしまったみたいな感じで顔を背けるそこの貴婦人。いやさぁ、別にいいじゃないですか!!これは人間の3大欲求の三分の一を満たすための生活必需品なんだ!!そんな俺に憐れみや軽蔑の眼差しを向けないでくれよ!

 



 まぁ、中にはこの視線も案外悪くないなと思ってしまうディープな紳士もいるでしょう。レジ台にAVを置いた時の店員の反応を嗜むソムリエも少なからずいると聞く。その者曰く、「女性店員の顔を紅くする表情が堪らない」とかぬかしていたようだ。恐ろしいね、人間のヘキは。



 令和の時代。オカズなんてインターネットで簡単に手に入ってしまう。わざわざ店舗に出向き、周囲の侮蔑を含んだ眼差しを直に感じながら背表紙をなぞる。

何故、そんなする必要もない苦労をするのか。何故、本来負うはずもない傷を負うのか_______。







 答えは単純。このスリルが癖になってしまったからである。







 そろそろ決着を着けなくてはならない。決死の覚悟で目星をつけていた作品の背表紙に手をかけ、全力で引っこ抜く。ピンク色のDVDが灰色の無機質なラックにはち切れんばかりの状態で収納されているため、簡単には取り出せない。

 

 取り出した勢いのあまり、お目当てのブツを床に落としてしまった。南無三、この上なき失態を犯してしまったぞ!パッケージの女優の裸体が床のベージュ色と同化している。幸い、周囲に人がいなかったので、俺はほっと胸を撫で下ろした。


 流石にこんな爆弾を無防備に持ち歩くのは危険すぎる。AVを持っていく際にはカモフラージュが必須である。大変嬉しいことに、18禁コーナーの向かいには、往年の洋楽コーナーが佇んでいた。適当に、290円のCDを使って現物を隠し、こっそりとレジに向かう。我々は、この技法を"サンドイッチ"と呼んでいる。もっと洒落た名前ないのかな。



 

 さぁ、一番緊張するでお馴染み(?)お会計の時間だ。幸い、レジの担当は若い男性である。同志、貴方ならこの気持ち分かるでしょう?俺はレジ台にブツを置いた。バーコードが読み取りやすいように、裏にして置いておきました(表紙見られたくなかっただけです)。店員の口角が少し上がったように見えたのは気のせいであろう。多分。


 店員は、「レジ袋はご利用なさいますか」と聞く。俺ははっきりと返答を述べた。




 




「必要ありません」




 レジ袋が有料になってから、この質問をされる度にきっぱりと断るようにしている。勿論、地球の未来を考えてね(ただのドケチである)。苦労して、やっと自分のものになった円盤。家でゆっくり嗜むことにしましょう。店の中でバッグに詰め込むとなんか怪しく見えてしまうので、一旦店の外に出る。



 

 辺りはすっかり暗くなっていた。武蔵野の連雀通りを走る車のテールランプが幻想的で、とても美しい。まだ抜いてすらいないのに、半分賢者タイムである。あぁ、今夜は宴だな。そんなことを考えながら、中古のAVをバッグの中に仕舞い込もうとした瞬間、誰かからの強烈な視線を感じた。慌てて前を向くとそこには________。







 




 クラスメイトの女子である笹塚さんが、驚愕の表情を浮かべ、只こちらを見ていた。











 5円.....結構大事ですよ。


 

 

 




 

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