第3話 添い寝彼女と眠れない僕 (1日目)

彼女は自然な様子でだらだらとし続けた。彼女は大きなあくびをした。

「眠いんだけど」

「寝る?」

「うん」

「どこで寝ればいいの?」

「ベッドでいいよ」

「あんたは?」

「床で寝るよ」

「ふーん」

彼女はどこか不満げに言った。僕は床で寝ることに特に抵抗はなかったし、女性を床で眠らせるわけにはいかない。僕は床に毛布を敷いてその上で横になった。

「電気消すよ?」

「うん」

 僕は電気を消した。いつも一人で寝ているのでなんだか落ち着かない。やましいことなどは考えていなかったが、落ち着いて眠ることは出来なかった。僕は目を閉じてじっとしていた。30分くらい経った時だろうか、彼女が立ち上がる音がした。トイレにでも行くか飲み物でも取りに行くのだろうと思った。しかし、そのどちらの予想も外れていた。彼女は僕の横に寝っ転がった。何か声をかけようかと思ったがなんと言えばいいのかわからない。僕は目を閉じたまま、ただじっとしていた。鼓動が速くなる。理由は明確には分からないが。

「もう寝てる?」

彼女が言った。

「いや、起きてるけど」

小さな声で答えた。

「ドキドキする?」

「しない」

「あっそ」

「二人とも床はおかしくない?」

彼女に聞いてみた?

「二人ともベッド行ったら変なことするじゃん」

「しないよ」

「別にしてもいいけどさ」

「からかわないでよ」

声が少し裏返った。

「じゃあベッドで寝よっか」

僕と彼女はベッドに上がった。二人でベッドに寝っ転がった。そのまま彼女は寝てしまった。僕は全く落ち着かなくて全然眠れなかった。

 彼女は僕といて幸せなんだろうか。そんなことを考え出してしまった。そんなこと聞いてみないと僕にはわからないことなのに。こういったことは考え出すと止まらないものだ。僕はそんなことを数十分も考え続けた。彼女と暮らしていく日々はどんなものなんだろう。人は出会うと基本的にいつか別れる。彼女と僕が離れ離れになるのはどんな時だろう。明日かもしれない。僕たちにはまだ二人の関係を引き留めておくほどの何かがない。早くそういったものができるように頑張ろうと思った。

 彼女の寝顔を見た。ぐっすり眠っている。今日はあんなことがあったんだ、彼女は精神的に疲れているんだろう。僕も少し疲れた。布団から少しはみ出していた彼女に布団をかけて僕はまた目を閉じた。


 目を閉じてもずっと彼女とその先のことばかり考えてしまう。しかし、そんなことは考えても何の意味もないことなんだ。僕は今のことだけを考えることにした。その時その時の彼女を幸せにしていけばいい。そうしていけばどんどん時間が経って、彼女と僕はもっと特別な関係になれる。そんなふうに自分に言い聞かせた。

 そんなことをしているうちに、僕もだんだんと眠たくなっていって、いつの間にか眠りについていた。


 僕は夢を見た。彼女の夢だ。彼女と街を歩く夢。内容はよく覚えていない。


 朝、彼女に揺らされて起きた。

「朝なんですけど」

よくわからない言い回しで起こされた。

「朝ですか」

よくわからない返事をした。カーテンを開けると朝日が差し込んできた。

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