第27話

 音も、気配も、力も、

 消える。

 私の認識の外から外れる。

 神の神罰だ……。

 紫紺の、光の、力の、奔流が全てを飲み込む。

 偉そうな男の首も、痩せこけた白衣の男も、いきなり現れた気配の人間も。

 壁も、天井も、全てを呑み込み膨れ上がる。

 果てには大地も、空に蠢く雲すらも貫き、

 満天の空が私の視界一杯に広がり、世界が広がる。

 パラパラっと土が私の頭上から降りてくる。

 あぁ、きれいだ。

 最後に空を見たのはいつだろうか?

 満天の空で天上の月が輝いている。

 月光が少年を照らす。

 美しい……。

 月光を背負いし少年は私の方へと振り返る。

「大丈夫?」

 少年はニコリと優しげな笑みを浮かべて私の方へと手を差し伸べる。

「あ、ありがとうございます」

 私はおずおずと少年の手をとる。

「いいんだよ……これは僕の……ね?」

 少年は少し悲しげな表情を浮かべて呟く。

「これは我が一族の業なのだから」

「業?違う。私は……!」

 この少年のせいなんかじゃない……!

 あぁ、だってこの少年はこんなにも……!

「こいつらはそう……えっと……『ジュネシス』!こいつらは『ジュネシス』闇に潜み闇を蓄えるもの……」

「じゅね、しす」

 そういえば偉そうな男がそんなようなことをくちにしていたな。

「彼らの誕生の原因の一端が我が一族にあるのだ……。これは僕が背負うべき業。僕の一族が背負うべき業なのだよ」

「な、何を……あなたは一体何をしているの?私に……手伝えないの?」

 悲しげな少年の顔を前に私の口は勝手に動いていた。

 不敬だと理解している。不相応だと理解している。身の丈に合わないことだと理解している。

 しかし、そう言わざるを負えない。

「ふっ。その心意気は嬉しい。その言葉だけで僕に十分だ。十分すぎるくらいだ……」

「駄目!足りない……。お願い……私を連れて行って」

 私は粘る。この人のお側にいたい……。

 すっかり無くなったと思っていた心が叫んでいた。

 その時、突然ポッカリと空いた穴から風が入り込んでくる。

「風が笑っている……ふっ。これもまた運命か……」

 少年は笑う。

「いいだろう……共に来るがいい……」

 少年は立ち上がった私に向けて手のひらを向けてくれる。

 あぁ。あぁ。あぁ。

 何という幸運。

 何という強運。

 何という天運。

 今までの不幸は今日この日のためにあったのだ。

「御身とともに……」

 私は少年の手をとり、跪いた。



 ストーカーさんは状態異常:盲目を獲得したよ!

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