第2話 夜露死苦ぅ!!

「カチコミや!」


「へ?カチコミ?」


アリューンは首をかしげる。


「そうそう、まぁ一般的な国取りやな」


「そ、そんなの無理よ!」


「そうなん?」


「えぇ、国には勇者だったり猛者もさぞろいなの!スライムのあなたが敵うはずが無い!」


「…なめられたもんやな」


ズルズルとアリューンの横にやってきた。


「ヤクザなめたらあかんで」


「…でもあなたスライムよね?」


「そうやな」


「…悪いけど魔物の中で一番弱いわよね?」


「そうなん?」


「そうよ、それにあなた一人じゃない」


「そうやな…今はな」


「へ?」


アリューンは不思議そうに首をかしげた。


「知ってるか?スライムは」


「スライムは?」


自慢げにスライムは言った。


「数が多いんや」


「…数で押すってこと?」


「そゆこと」


「でも気配も無いけど」


アリューンの言う通り辺りは暗く何も見えず感じない。


「王国におるんや」


「王国でもスライムは見たこと無いけど、地下に居るの?」


「いや、人の姿しとる」


「擬態?」


「ちょっと違う、正しくは変異やな」


「そんなスライムが…」


「実は私もその一匹だったりする」


スライムはすこし上に伸びた、恐らく胸を張ったつもりなのだろう。


「はぁ」


「ん?信じてへんな、なら見せたる」


ほっ!と言いスライムが高く飛び上がった。


「これが私の姿や」


その姿はとてもスライムとは思えなかった、長い黒髪にとても良いスタイル、更に綺麗な着物を身に纏っていた。


「…」


「ん?どういたん?」


「いや、思ったより美人だったことにびっくりしてる」


「失礼やなぁレディに向かって」


「とりあえず、どうやって仲間を集めるの?」


「とりあえず王国に行って心当たりのある奴を募って、内側から攻める」


「でもどうやって王国内に入るつもりなの?」


「実はここの洞窟から直接王国へ行ける道があるんよ、それを使って入る」


「そんなに広くは見えないけど」


「まぁ、行ってみてからのお楽しみってことで」


そう言うと彼女?は洞窟の奥地へと向かって行った。


「ちょ、ちょっと!私魔物じゃないから暗すぎて何も見えないのよ!」


そう洞窟は明かりも無く文字通り暗黒だった。


「あー、ごめんごめん忘れとったわ、これ使いな」


そう言うと着物の懐から長方形の箱が出てき、それをアリューンに渡した。


「えっ、なにこれ」


「ちょうど頭にかけられるように紐が付いとるやろ?それをかけるとよく見える」


「こう?」


アリューンは入れた通り箱を着けてみた。


「そうそう、見えるやろ?」


「えぇ、びっくりするほど」


着けてみると視界は緑色になり洞窟の内部がはっきりと見える。


「これ何?」


「古い友人の物でな、暗視ゴーグルって言うんやって」


「暗視ゴーグル…聞いたことないわね」


「それはそれこれはこれとして、さっさと行こ」


「えぇ」


こうしてアリューンと彼女(スライム)の国盗りカチコミが始まった。

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