簡単な君のつくりかた

いいかい この手順をよく覚えておくんだ

なに 簡単だから心配することはないよ


まずはその温もりと優しさに満ちている

布団を抜け出すことからはじめよう

ぬるま湯に浸かったようなその頭では

ろくに大したものはできやしないから


そうして次はひとりで机に向かいなさい

紅茶や珈琲を淹れてからでもいいだろう

必ずそのとき薬をひとつ持っておくのだ


そして数分間 目を閉じなさい

瞼の裏に何かが映り始めたら そうだ

それが君にとっての「君」のタネだよ


見失わぬようそれを捕まえておくんだよ

君の頭の牢の中にそいつをしっかりと

閉じ込めて逃さぬようにしてしまうのだ

ただし牢は限りなく広くありなさい

大舞台のような場所にそいつを置くのだ


そして今度はそれをきちんと眺めなさい


そいつはどんな感情を持っているのか

そいつはどんな経験をしてきたのか

そいつはどんな気持ちで君をみているか


そう そう そうだ


君が今頭に思い浮かべたことが正解だ

大丈夫 大丈夫 自信を持ちなさい

誰の目も評価も気にする必要はない


いいかい、それが出来上がったら

君はこの紙にそいつの人生を書き記すのだ

それはたった一幕だけでもいいんだ

彼の全てをまだ理解はできないだろう


いいんだ 君が思っていることでいい

誰も君に反対したりはしないからね


君は正しく神であり演出家であり

君は正しく彼の主人であるのだ

君は正しく彼を扱うことができるのだ


そう そう それだけでいい


自分で創ってみせるといい

僕はここからそれを見守ってあげよう


なぜなら君も僕に囚われた人間だからだ

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