第8話

「うーん」


バートのそばには、低く唸る毛布の塊があった。


「痛いよう」


先ほどからずっと唸り続けていた毛布の塊が、情けない声を出した。


「当然だ。あれだけ飲み食いしたら、誰だってそうなる」


バートはベッドのそばにあるひとり掛けソファに腰を下ろし、望遠鏡を組み立てていた。


「お腹気持ち悪い。痛いし。ムカムカする。吐きそう。薬をお願い」


毛布の塊は、もそもそと蠢きながらうめいた。

バートは小さくため息をついて、ベッド横のテーブルにある小瓶を手に取った。

小瓶の蓋を開けて毛布の塊に近づけると、毛布から白い手がにゅっと伸びて小瓶を受け取り、毛布の中に引っ込んだ。


「うう。苦いよう」


「胃腸薬は苦いから効くんだ」


「うええん」


毛布の塊から情けない声が聞こえたと同時に、空になった小瓶が転がり出て、ゴトン、と音を立てて床に落ちた。

バートは黙って小瓶を拾い上げた。


「夜まで寝ていれば治る。望遠鏡は組み立ておいたから、星が出るまで寝ていろ。何かあったら、呼んでくれ」


「うえええん」


返事の代わりに情けない泣き声が聞こえた。

バートはいつものように小さくため息をついた。

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