第8話 ルッキズムの転換

遠くでぼくを呼ぶ声が聞こえる。


声の聞こえる方を見ると、ジィンゴくんがいる。


ジィンゴくんの横にはバズィちゃんもいる。


ぼくは、今行くから待っててねと言って、階段を下り玄関を出た。


街中の女子がぼくを見に来ている。


バズィちゃんはぼくの本命だ。


高身長、痩せ型、肌荒れ無し、二重まぶたでしっぽが長いぼくは、この街ではスターだ。


性格が悪く、癖も強いが、皆がちやほやしてくれる。


街の王子様と言ってもいいだろう。


しかし、最近、おかしなことが起こった。


チビでデブでニキビ面、一重でしっぽが短いジィンゴくんに複数の彼女がいる噂が聞こえてきた。


ジィンゴくんは、めちゃめちゃ性格がいい。


バズィちゃんもジィンゴくんにメロメロだ。


しばらくすると、ぼくの時代は終わった。


世間の美意識は、チビでデブでニキビ面、一重でしっぽが短いジィンゴくんに移った。


性格至上主義の時代が訪れた。


見た目で徳をしていた人種は滅び、性格がいい人種が生き残った。


それが現代だ。


ぼくは帰る家が無くなった。


正確には家のドアの場所が分からなくなった。


小さな穴があり、そこをのぞくと、遠くでテレビを見ながら笑っている家族の声が響いてきた。


見た目だけで、性格を育てなかった両親を恨んだ。


両親はチビでデブでニキビ面、一重でしっぽが短い人種であり、性格が悪い。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る