【襲来】
屋上を出て階段を下りながら私は、ふと思ったことを口にした。
「
すると
「部下、家来・・・・にしては偉そう、って言いたい?」
「え、そういうわけじゃ──」
「誤解してるようだけど、
わかった? と言いたげな目を愛美は私に向けた。
「ごめんなさい・・・・」
「あ、そんな謝ることじゃないから。でもあなたが18になるより前に早々と私の正体を明かすような流れになったからには、これからは言うべきことはズバズバ言わせてもらうわね。だってあなた
「う・・・・ん」
危なっかしい、と言われ(なりたくて跡取りになったわけじゃないし・・・・)という愚痴が内心にこぼれたが、とりあえずどうにも取れるような曖昧な表情に私はなった。
「まあとにかく今日はもう帰りましょ」
愛美は私の微妙な感情は意にも返さない風な口調で言うと、再び階段を下り始めた。
2段遅れで私も続く。
ガチャ
ふいに、屋上に出る扉が開く音がした。
私たちの他に何人かは生徒がいたため、誰かが出て来たのだろうと思った。
が──
「きゃっ」
「
何が起きたのか、瞬間的には分からないまま私の身体は大きくバランスを崩し、横向きにねじれた姿勢で落下した。
けれど踊り場に叩きつけられる寸前、弾力のある何かに乗り上げた身体は硬質な衝撃を受けることなくそこに倒れ込んだ。
「う・・・・」
「
「だ、大丈夫・・・・ごめんなさい、下敷きにしちゃって・・・・」
「私は平気。起きれる?」
「うん」
落下の精神的衝撃はあったが、愛美の咄嗟の行動のお陰で幸い私の身体は何ともなかった。
それだけに私が落ちきる寸前、身を投げ出してクッションになってくれたのであろう彼女に申し訳ない気持ちになった。
「本当に大丈夫?」
「平気平気。こんなこともね、
「女?」
「あなたを突き落とした女。あいつクラスはどこだろう──あれ、たぶん
「えっ?!」
ゾッとした。
三国川教授の話で初めて聞いた
まだすんなりとは飲み込めていない〈それ〉が、学内にいる!?
「まさか・・・・」
「間違いないと思う。落とされる瞬間、何か匂いがしなかった?」
「匂い?」
「沼のような、取り替えていない水槽の水のような・・・・とか」
「え、沼? それは気付かなかった。一瞬のことだったし・・・・」
後から下りてきた誰かが私に近付き、ふいに腕を引っ張り、そして落ちた──あまりに不意討ちすぎて相手についての記憶がない。
駆け足が遠ざかる音が耳に残っているだけだ。
「その、
「そう、
「魔臭・・・・」
「まあそれはともかく、これは奴らの宣戦布告よ。
愛美の小柄な身体から瞬時、熱を帯びた赤い波動がほとばしり出たように見えた。
その気迫に畏怖を感じ、同時に私は自分が非現実のゾーンに入っている実感をあらためて感じた。
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