「はぁ?何言ってやがる。ここは俺の────」



部屋、じゃねぇ!?


って………ええええぇ!!?





一気に目覚め行く脳内で、この現実を把握すると…



まず、俺は兄貴の部屋で勝手に寛いでいて。

眠くなったから布団に入って、と…。


暫く寝ていたら、が布団に入っ─────…って来るハズがなく。





…ってことは、だ。





「えっ…な、つ…さん?」


「せっ、晴二くん…!?」



そう、俺がさっきまで寝てたベッド上には春流の兄ちゃん…夏津さんがいて。


となると、俺が今イチャコラしようとした相手は───…



マジかよ…







「覚悟は出来てんだろうなぁ?いくら馬鹿な弟でも、俺のモノに手をつけたらどうなるか…」


奴は本気だ。

眼がそう物語っている。


ヤバい…いくら勘違いで起きた不祥事と云えど、

そんな言い訳が通用するような雰囲気じゃねぇし…



俺、ピンチじゃね?







「待って、陽一…!」


そこへ泣きながら、俺と兄貴の間に割って入る夏津さん。


長い睫毛を濡らし、

ぽろぽろと涙を零しながら兄貴に縋りつく。



こうなると夏津さんだけが頼りだぜ…。








「違うんだ、陽一…僕が────…」



どうやら夏津さんは、喧嘩してしまった事を後悔したらしく。仲直りするために、兄貴の部屋へとやって来たんだけども。


部屋も暗く、俺が布団を目深に被っていた事もあり。

要はベッドで寝てた俺を、兄貴と勘違いしてしまった…と言うわけだ。



途中、違和感を抱いたらしいんだけどね…。







「ごめん…僕が悪いんだ。こんな事になるなら、変なヤキモチなんか妬かなければ良かった…。」


「夏津…」


泣きじゃくる夏津さんの肩を抱き寄せる兄貴。

一瞬ビクリと肩を揺らした夏津さんは、ごめんと何度も口にしながらその胸に顔を埋める。



何コレ、俺ちょーアウェイな感じなんスけど…?






「ばーか。んなの気にしてねぇよ…。それだけ俺に惚れちまってるって、事なんだろう?」


我が兄ながら、よくそんなクサい台詞吐けるよな…。普段は俺に死ねだのボケだの言ってるクセに。






「うん、愛してる…」


流石、兄貴の恋人。こっちも良いカウンターしてるよ…。


そのヤラシイ上目遣いは、主演女優も真っ青だ。






「夏津…」


「陽一…」


見つめ合うふたり。

まるで別世界、映画のスクリーンを観てるみたいに、その距離が縮まって─────…







「ンッ、ふぅ…」


……………。


ちょっとちょっと、そりゃないっしょ…

俺の存在など最早眼中になく。ふたりは唇を寄せ合って…


それだけなら良かったんだけども。







「アッ…ンンッ…」


「フッ…3日もシてねえから、溜まってんのか?」


「んっ…早くキて…ああっ…!!」



ゴクリ…

動くに動けず、とか言ってちゃっかりその光景を堪能していたら─────…






「でっ…!!」


兄貴の長~い足が、座ったままの俺の頭に直撃して。






「邪魔だ、出ていけ。」


ズド━━ンとドSな命令を下され。

俺は這うように、いそいそと部屋を後にした。


閉じられたドアから施錠音がしたかと思うと、

すぐさま夏津さんのエロい声が…






「え?俺って、一体…」


ズキズキと疼く頭と下半身を持て余し、

俺は暫くその場所から動けなかった。

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