010_秩序の導きにて渡る者

「朝」「見返り」「禁じられた世界」で。


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 俺は移動する事が禁じられた世界で、ふと目を覚ました。俺のこの狭苦しく、移動に不自由な境遇にもなんの疑問も不満も抱かなかった。

 だって、そうであろう? 俺はこの『点』の領域しか知らないのだから。


 でも、そんなあるとき。


『点』が『線』になっていた。

そう、俺が知らぬ間に、世界が広まっていたのだ。

 俺はそんな『点』の集まりであり、直線曲線どこまでも続く『線』の世界を謳歌した。

 俺は始めて『前』と『後ろ』、そして『原点』の概念を知る。もうお分かりであろう。『原点』とは、俺が元々いたゼロ次元の世界のことだ。俺はふと閃いた。

 この世界は元の『ゼロ次元』の世界から、『一次元』の世界に生まれかわったのだ。


 でも、またまたそんなあるとき。

 俺の周囲に伸びる線の太さが大きく広がり、横へ横へと大きく広がる。そう、世界はどこまでも広がる平面『二次元』の世界となったのだ。


 で、で。

 またも、ある日あのとき、俺の眼には山に窪みにと高さが見える。世界は劇的に広がり、変化した。

 うん、俺は『三次元』にいる。もう俺はこの程度では驚かない。


 で。

 麺が時間の経過ととともに、グネグネうねうねと動き出したではないか。その変化は見ていて中々飽きないが、上下する地面は俺を酔いに誘った。うん、今度の変化は『三次元』に時間の概念を加えた『四次元』だ。

 うん、気分が悪くなる以外は、『四次元』の世界は面白い。


 そして。

 また俺の世界に変化があった。いや、あったはずだ。俺は丘を一つ超えて寝た。

 だがどうだ、目覚めて俺が見たのは見知らぬくぼみの底。俺は首を捻る。

 そして俺は、構わずその窪みで寝続ける。


 と、目が覚めた。俺は大きく首を捻る。なぜなら、俺は丘の上に寝ていたからだ。

 これは『無数の時間軸が存在する世界』……『五次元、パラレルワールド』かもしれない。

 俺はそんな世界で、どうしようかと迷った。


 しかし同時に、俺の心の中で胸一杯に期待が高まる。次元を渡る、こんな冒険の続けている俺のことだ。きっと神様が俺に用意してくれる見返りがあるに違いない。俺の頬はだらしなく綻ぶ。

 

 で、俺より高次元に存在しているであろう、また一人の俺よ、もしくは神よ、何者か偉大なる者よ。

 尋ねたい。

 俺はこれからどうなるんだ? そろそろ答えを……いや、ヒントだけでも教えて欲しい。

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