魔法を使えない最強剣士、魔法至上主義の世界を100ノ魔剣で成り上がる

影束ライト

第一章 魔剣士と魔法学園

第1話 魔法至上主義の世界

【魔法】

 それはこの世界において絶対的なもの。


 この世界では魔法が使えるものが偉く上の立場となり、魔法が使えないものは上の者に搾取され淘汰される。そんな魔法至上主義の世界。


 そして、そんな世界を縮小したような学園「王立魔法学園」

 15歳になった少年少女が入学を目指すその学園は最強の魔法使いを目指すものにとっての登竜門。最も難関であるが、魔法を習うのにこれ以上の場所はない学びや。

 その学園では国の未来を担う魔法使いたちが己の実力を競っていた。


 そんな中、魔法が一切使少年が一人、王立魔法学園の入学試験に挑もうとしていた。


 世界最強、世界トップクラスの魔法の使いたちに対し、少年はその手に杖ではなく剣をとって戦う。


 この物語は、魔法至上主義の学園を100本の魔剣を使って、成り上がる少年の物語。








 ――――――――――――――――――――


「ここが、王立魔法学園。次世代最高の魔法使いを育てる場所か。絶対この学園に入らないとな」


 門の前で巨大な校舎を見上げる少年が一人いる。

 その少年の名はキリヤ。

 黒髪に黒目、どこにでもいるような普通の少年だ。


 そして今日は王立魔法学園の入学試験日。

 何百人もの受験者が学園の中に足を進めている。


 そんな中、キリヤは他の人たちから奇妙なものを見るような視線で見られている。

 それもそのはず、キリヤ以外の人は皆、杖を持ちローブを羽織っている。


 だがキリヤは……


「おい、そこの少年。お前入学希望者か?」


「はい、そうですけど?」


 キリヤに声をかけたのは、この学園の教師の男。この教師も例にもれず杖を持っている。


「ならば、杖やローブはどうしたんだ?というか、その腰の剣は何だ!?」


 教師が声をかけたのと、他の人から奇妙なものを見るような視線を送られていたのはこれが理由だ。


 キリヤは魔法学園に入るにも関わらず、魔法使いに必須な杖やローブを持たず、それどころか時代遅れの剣を持って試験に挑もうとしているのだから。


「別に入学試験で剣を使ってはいけない、なんてルールはありませんよね?」


「なんだと?確かにそんなルールはないが……。その言いよう、まさかほんとにその剣を使うつもりなのか!」


「そうですけど?」


 教師の言葉にキリヤが頷くと教師は、突然笑い出す。 


「く、ははははは!まさか、ほんとにそんな時代遅れの鉛の塊でこの王立魔法学園の試験に挑もうとはな。無謀にもほどがあるな、くははは!!!!」


「……はぁ〜。じゃあ俺は急ぐので失礼します」  


 キリヤはバカにしてくる教師を無視して門を通る。学園に入っても周りからは奇妙な物を見るような視線を送られる。


「やっぱりこうなるよな。だけど、たとえ魔法が使えなくても、俺の願いを叶えるにはこの学園に入学しなければならないんだ」


 キリヤは思いを胸に試験会場へと向かった。 


 _______


 午前中で筆記試験が終わり、昼を挟んでいよいよ本命の実技試験になった。

 筆記試験の問題はほとんどが一般常識。学園入学に一番大きく作用するのは実技の試験だ。 


「筆記試験は問題はなかった。問題は次だな」


 キリヤは実技の試験会場へ入る。


「ほぅ、俺の相手はお前か。まさか本当に試験を受けているとは驚いたぞ」


 そこに居たのは門の前で会った教師だった。

 教師の言うように、キリヤの相手はこの教師。


「それにしても運が悪かったな。俺は今回の試験をする教師の中でもトップクラスの実力者。対してお前はそんな鉛の塊を使うときた。まさにやるだけ無駄、もう諦めて帰ったらどうだ?」


 教師はバカにするようにキリヤに話す。

 だがキリヤは冷静に、


「試験よろしくお願いします」


 と、一礼をする。


「そうか。あくまでも試験は受けるのか。まぁ、いいだろう現実というものを教えてやる」


 教師は杖を構える。


 対してキリヤは腰の剣に手を添える。


 二人が構えたところで、審判役の教師がカウントを始める。


「それでは実技試験、開始!」


 開始の合図が出た瞬間、教師は魔法を発動する。


「一撃で終わらせてやろう。【フレア・ボール】」


 教師は巨大な炎の玉を魔法陣から出現させる。

 出現した巨大な炎の玉はキリヤに襲いかかる。


「ははは。恐怖で動けないか、勝負あったな」


 教師は【フレア・ボール】を前にし、一切動かないキリヤを見て勝利を確信する。


 だが、


「……『斬魔ざんま』」


 キリヤが呟いた次の瞬間、


 スパッ


 と、【フレア・ボール】が縦に真っ二つに斬れた。

 二つに分かれた【フレア・ボール】はキリヤの左右を通っていき後ろの壁にぶつかって消える。


「なんだと!?なんだ、今何が起こった!?!」 


 教師は声を出してうろたえる。

 それもそのはず、普通の剣では魔法を切るなんて事は不可能なのだから。


 教師はうろたえながらも魔法を発動させようとするが、どうしても先程のことが気になり魔法の構築に手間取る。

 そうして生まれた隙が、教師の命取りになる。


「隙だらけですよ、先生」


「なっ!?」


 教師が魔法を斬られたことに対する驚きと魔法構築に手間を取ったことで生まれた数瞬。

 その数瞬の間に、キリヤは教師の背後をとった。


「くそっ!【フレア・】」


「遅いっ!」


 教師は急いで魔法を放とうとするが、それより速くキリヤが教師に近づき、剣をのど元に突きつける。


「チェックメイト、ですね」


「うっ!……降参だ」


 教師は顔を伏せて両手を上げて降参する。


「勝者、受験生キリヤ!」


 実技試験に勝利し、 キリヤは見事、入学試験を合格した。






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