(2)魔力は温かい

◇◇◇魔の森・入口◇◇◇


「っと勢いのみできたものの……やっぱり怖ぇ~~~!」

だって俺まだ強くなんてなってないからな、普通に昨日ボコられた痛みで身体が思うように動けないんですけど。


「なあプス。俺はこの森で何を倒してレベルアップすんだ?」

「……レベルアップ?」

「ああっレベルアップってのは……」


かくかくしかじかと説明完了。

するとプスは合点が言ったのか俺の質問に答えてくれた。


「いい?今のヒラじゃ魔獣とかは無理」

「その通りだな」

「魔獣以外の普通の獣も無理」

「クマどころかイノシシとかでも怖いからな」


この世界の普通の動物を一切知らないけどな。

「だから狙うのは虫と植物!」

「………………………はい?」

「虫なら片手でも倒せる、そして植物は動かないから安全に倒せる!」


……あの街で買い物をしてる時に、俺は武器の類を購入しなかった。理由はプスがそんなの買うだけ無駄だと言ったからだ。

その理由が今分かったよ。


害虫駆除と除草作業に武器とかそりゃいらんわな!。ええマジッスか!?異世界まで来てその手の業者の真似事でもすんの?。


「虫は体内に。そして植物も根っ子の所に魔石を持っている、つまり倒すと魔力を貰える相手。

だけどある程度戦える様になった物に取っては貰える魔力がとっても少ないから相手にされない」


「成る程ねぇ、つまり俺はそのある程度戦えるヤツらの、下の下。だからそこからスタートしろって事か……」

「そう!」


しかし植物の根っ子に石か……まさか種の代わりにそれをまき散らして勢力拡大してるのか、この世界の植物は?。


ここが俺の知る世界とは勝手が色々と違う事を改めて思い知らされるな。

そもそも果たしてこの世界の虫と植物が、俺の常識の中にあるアレらと同じなのだろうか?。


「………あ~~~クソッ」

不安は考え出したらキリがない、しかし始める前から足踏みなんてしてる余裕がのいのも確か。


やはり進むしかないんだ、だから街から出て来た。

プスは俺の強くなりたいと言う願いに応えようとしてくれているんだ、今度は俺の番だ。


2度とあんな情けない姿を晒したくない。少しは旅の同行者として頼りになれる様に頑張るんだ。

凡人なのは百も承知、頑張る以外なにができるんだって話だよな。


「よしっ行くぞ!行くぞ!行くぞ!」

足………震えてる。

「ヒラ!行くぞ!」

「………おうっ!」

震えが、止まった。


俺達は森に再び侵入した。



そして少し歩く、森は奥に行けば行くほど危険な魔獣が出て来るが、街に近い所には逆に殆ど魔獣は出ないらしい。


安全マージンを取れる所で着実に魔力(経験値)を稼ぐのが今回の森侵入の目的だ。

「しかしプス、虫とか植物でも危険なヤツはいないのか?」

「いる、けど虫の方はヒラの持ってる道具が使えるとプスは睨む!」


「え?俺の持ってる道具?」

俺はリュックサックの中にある道具についてプスにも幾つか説明をしていた。この世界でも何か使える物がないかを聞きたかったからだ。


「そうっあの虫を殺せるヤツがいる!」

「は?それって……蚊取り線香か?」

蚊取り線香、虫が嫌いな俺は腰のベルトに吊り下げられるケースと超強力だと有名なとある蚊取り線香をリュックサックの中に持ってきていた。


う~~ん確かにこれは屋内用のヤツじゃなくアウトドア用にと作られた蚊取り線香だ、効果範囲も威力も普通のよりはるかに強い。

「けど流石にこれひとつじゃ蚊並に小さい虫くらいしか殺れねぇぞ?」


ちなみにこの蚊取り線香、ゴキブリには効かないクセにカブトムシとかにはとても良く効くので屋内でカブトムシを飼育してる人は本当に注意する必要があるのである。豆知識だよ。


「大丈夫!それを魔力で強化する」

「まっ魔力で強化!?」

いきなりファンタジーなイベントが発生。

「そんな事、俺に出来るのか?」

「出来る!プスが手伝うから余裕!」


なっなんて頼もしい石ころだ!。

「先ずはカトリセンコウを出して右手の平に置く、その上にプスを置く」

「わっわかった」


言われた通りにする、そして蚊取り線香の上にプスを置くと次のステップの話となった。

「次は集中する、目をつぶる」

「ああっ」


そして目をつぶる、もちろん何も見えない訳だが。

「ヒラ!これが魔力!ムムーーーッ!」

プスが気合いの声を上げる、すると暖かな何かが俺の右手から、身体の中に入ってきた!。


「この温かい何かが魔力なのか?」

「そうっそれがプスの魔力、同じように温かい物がヒラの中にもある、探してみる」

マジで?取り敢えず探してみるか……。


「人間の魔石は心臓にある、その辺りを集中して探ってみる」

「おっおう!」

意識を心臓に集中、正直石が心臓にある感覚なんてさっぱりだから温かいあの感覚を探してみる。


「………………!」

あった、確かにあったぞ!本当に小さな塊が熱を持っている様に感じる。

これが………おれの魔力か!。


プスの魔力に比べれば本当に小さな物だ、ビー玉よりも更に小さな物だ。こいつは俺が本当に雑魚な証拠なんだな、けどいずれこれを成長させていけば俺も………強くなれる筈だ。



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