第44話 欲の魔女②

「なんで?私寝る時は服を着ない派なの、てか寝込みを襲いに来たのになんでそんな事で驚くの?」


 突然現れたルルルンに動揺する事なく、女は平然と裸を見せびらかす。


「ちょっと!見せびらかさないでくれます!?」


 直視できない美貌にルルルンは目を逸らす。


「ってか、ちょっと待って!あなた女?女じゃない?なに?じゃあ、夜這いじゃないの?なにそれぇ下がるぅ」


 魔女と思われる女は、ルルルンが女である事にがっかりし、明らかにテンションを下げていた。


「で?あなたも魔女?」


 魔女と思われる黒上の女性はめんどくさそうに、ストレートな質問をする。


「あなたもってことは、あんたは、魔女でいいんだよな」

「あなたはどう思う?私は魔女だと思う?ねぇ」


 魔女だと思う?と聞かれれば、その答えは「はい」だ。

 歳は20歳程度の若い女性、老婆的な魔女を多少想像していたルルルンには予想外であった。少女と呼んでも怒られないであろう容姿だが、明らかに漂う魔力が魔法使いのそれだ、しかもかなり上位の魔法使い。

 つまりこの裸の女は世界中が恐れる魔女の一人「欲の魔女」である。確信はあるが、どうもその想像とは違う陽気な態度に疑問が残る。


「私が魔女だとしてぇ、同じ魔女のあなたは、何の用事で私の寝室にいきなり現れた訳?夜這い?そうゆう趣味?でもでも私、同性には興味ないの……ごめんね……ところで、夜這いなのよね?」

「ちがうよ!!」

「じゃあ何しに来たの?」


 明るい笑みを浮かべて魔女がささやく。得体のしれない存在にルルルンは警戒を解く事なく、まじめに魔女の質問「何しに来たの?」に答える。

 

「争いに来た訳じゃない、色々と聞きたい事があって来た……いきなり寝室に転移した事は、謝ります、ごめんなさい」

「素直に謝るのね」


 あのライネスとも会話が出来たんだ、きっと魔女とも話合いはできるはず、ルルルンは相手を刺激しないよう気を使いながら素直に話す。


「あと、俺は魔女じゃなくて、その……魔法少女だ」


 大事な事なので訂正した。


「魔法少女?え?なに?なにそれ、もう一回言って」

「え?いや……だから魔法少女……」

「なにそれ、ウケル、魔法少女?wwww」


 欲の魔女は魔法少女と自称するルルルンに対して少女のように大声で笑う。


「超可愛いんだけど」

「そんなに笑わなくてもいいだろ?」

「あぁ、ゴメン、ゴメン、真面目なのね、オッケー」


 はぁーっと一息ついて笑いを止めた北の魔女にルルルンが問う。


「単刀直入に聞く、お前は悪い魔女か?」

「ウケル、何その質問、そんなこと聞いてくる人間がまだ居るなんてね、あなたやっぱりおかしいんじゃないの?」

「真面目な質問だ!ちゃんと答えてくれ」

「ごめんって、真面目な質問ね、ハイハイ」

「って、おい!」


 欲の魔女はルルルンに近づき、耳元で囁くように質問に答える。



 パチンッ!その言葉にルルルンの魔法無効が反応する。


「何?」


 魔法が無効化されたことに、北の魔女が動揺する。


「魅了魔法(エンカタル)か、確かに悪い魔女だ」

「私の魔法を無効にしたの?」

「そのレベルの魔法は自動で無効にする、やるだけ無駄だよ」

「まじで?」


 へぇ、とルルルンを舐めまわすように見定めると、少しだけ態度が変わる。


「魔法少女ねぇ……やっぱりあなた面白いじゃん」

「争うつもりはない、俺は話をしたいだけだ」


 ルルルンの不気味な気配に、欲の魔女はただならぬ予感を感じ、対話に応じる姿勢を見せた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る