棒振を見せびらかした蚊

 人と動物が同じ言葉を話せるようになった未来。とある家に宿る蚊がある時その家主を「ご覧に入れたいものがあります」といざなった。家主がついて行くと普段顧みぬ排水溝で棒振が無尽蔵に蠢いている様を見せびらかして蚊が宣った。

「家主様! 家主様が私にあれだけ血を分け与えてくれたお陰でこんなにも沢山の子宝に恵まれました! これからも子々孫々その血を美味しく頂きますね!」

 家主は直ちに殺虫剤を手配して棒振達をことごとく殺しつくした。

「何故です!? 家主様! 私の事は今まで見逃してくれていたではありませんか!?」

 と喚く蚊に向かって家主は答えた。

「理解できたか? 自分の大切なものを奪われるのがどういうことか? まだ痒みの置き土産の分こっちには貸しがあるぞ」

 

 悪癖に開き直る者は自らよりも大切なものを失わなければ悔恨の念を抱く事がないという事をこの話は解き明かしている。

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