日本人が論理的に考えるのが苦手な理由

 大山津見神おおやまつみのかみ邇邇藝命ににぎのみことに娘二人を差し出した時、姉の石長姫いわながひめの嫁入り道具の中には小さな石版が二枚あった。

 石版には一本の縦線と横線を交差させた印が刻まれたものと、二本ずつ縦線と横線を交差させた印が刻まれたものとがあった。

 その醜さに恐れをなして、邇邇藝命が石長姫を父の元に帰したのは神話に語られる通りである。


 父の元に帰された石長姫が一人嘆息して言うには

「既に天孫は、『四』を『死』と、『九』を『苦』と聞きなしてらっしゃる。私を娶って下さっていれば、そんな妄執をこの石版で祓いさって差し上げられましたのに」


 こうして我が国は四分割図と九分割図を取り入れるのに遅れを取ってしまったのである。

 その代わりに手に入れたのが木花咲耶姫このはなさくやひめの侍従である虫や鳥達の声を聞きなす能力である。

 この能力が石長姫の嫁入り道具に見合うかどうかは、今の所わからない。 

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