　海に泳ぐ生き物達が海神（わたつみ）を祀る王を決めようと話し合い、最終候補に鮫（さめ）と鯱（しゃち）が残った。

　二種のどちらを王にするかの談義で海豚（いるか）が次のように提案した。

「浅瀬まで行ってそこを泳いでいる人間を多く狩れた方を王にするのはどうだろう？」

　これを聞いて鱝（えい）が言った。

「お待ち下さい！　人間を狩ってはなりませぬ！　奴らを狩ると我らが狩られる事になりますぞ！」

　二者の申し出を聞いて長老の鯨（くじら）が審判を下した。

「見目麗しい海豚が間違う筈がなかろう。鱝は見てくれが悪いからやっかんでいるに違いないのだ」

　こうして鱝の意見は取り下げられた。

　世の中には正しい事を言っているのに、見てくれが悪いせいで聞いてもらえない人が大勢いる。

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