変わり者たちの出会い方

 終業の鐘が校舎中に鳴り響く。同時にそれは、生徒たちの放課への開放を意味し、俺達は晴れて自由を手に入れる。これから後の予定はそれぞれが異なり、部活のある者、塾へ通う者、特に予定の無い者等様々だ。 

 全生徒が一斉に動き出し、やがて学校全体が喧騒に包まれる。


 俺こと初狩はつかり蘇雨すあまは、丁度二週間前に進級したばかりの高校二年生。身長170cm、体重58kg。顔、ルックス共に、ごく稀に会う親戚以外からは褒められたことは一度も無い。勿論親族が褒めるのも、社交辞令の一環である。


 学業の成績は褒められるほど上澄みでもなく、かといって澱という訳でもない、中途半端なところを反復横跳び、常に漂っている。しかし、最下層に居た入学時と比べれば、ここまで登ってきたのは自分なりに大きな進歩だと思っている。


 ……まあ、総括すると、ごく一般的な平凡に近しい人間というわけだ。


「あー疲れた。今日―も一日平和だったなぁー」


 一人の男子生徒が背伸びをしながらこっちへやってくる。

 背は俺よりも数cm高く、長身で、顔は贔屓目に見ずともきっとイケメンに分類されるのだろう。野郎はともかくとして、女子なら道ですれ違えば、十人中五、六人は振り返るのではないだろうか。


 男の俺から見ても明らかに恵まれた容貌を持つその男は、名を久喜くき悠生ゆうせいという。数少ない俺の旧友の一人で、小学生の頃から今まで同じクラスになったことは無かったものの、今年は念願叶って(?)同じクラスになったのである。


「ご苦労さん。昼に弁当ひっくり返しても、それもお前の中じゃ平和の一部なんだな」


 リラックス中の友人に対し、俺は冗談めかして言う。昼のトラブルも彼にとっては平和な日常の一部に過ぎないらしい。


「ああ、何もトラブルは無し。忘れ物はせず、授業中に寝て怒られることもない。マンホールの蓋は飛んでこないし、校舎が爆発することも無かった。今日も世界は平和だ」

「学校が爆発? 最高に面白そうじゃん」


 俺は帰り支度を進めながら、適当に言葉を返す。


「平和を願っていれば、おのずとその通りになるんだよ」


 一人の人間が平和を願っているだけで校舎の爆発を食い止められたら世界中の戦争や紛争は綺麗さっぱり無くなるだろうさ。……そもそも学校が爆発すること自体現代ではレアケースだ。俺としては一度学校が爆発するところを見たくはある。

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