第31話 いざプラスタ!!
かっぽかっぽと緩やかに歩みを進めるオディゴの上で、俺はのんびりと手綱を握って北を目指している。その左隣、一頭分の距離を空けて馬車がついてきている。
「ホントにこれでよろしかったんですか? 黒騎士様?」
その馬車の御者をしているライラから声がとんできた。
「これで、って?」
軽くふり返ってからそう聞くとライラはちょっと背筋を伸ばしていた。
「だって、あれだけの魔物を相手にして勝ったんですよ? それも大きな被害だってなしに! それなのに、素材は全部置いて行って、報酬も口約束だけだなんて……」
その言葉は、悔しさの発露だった。怒りは確かに混ざっているのだろう。商人として、もったいないという気持ちもあるのかもしれない。
それでも、ライラは俺が蔑ろにされた様に見えて悔しいんだろう。
「まぁ、そんなに気にしなくてもいいだろう。口約束の報酬だって、期待して良いと思うぞ?」
「黒騎士様本人がそう仰るというなら、ぼくもこれ以上言うつもりはないですけど……そんなに信用できるんですか? その、ヴィゴっていう人?」
その顔には隠しきれない不満と疑問が表れている。
「ああ」
だから、俺は短く言い切って。
「王に頼られるほどの有力貴族からの信用があって、騎士団にも伝手がある。それでいて、強い」
ライラの目を見つめた。
「そんな相手が自分から言ってくれたことだぞ?」
そこまでを言うと、ライラは渋々といった様子ため息を吐いた。
「はぁ~」
そうしてこっちをまっすぐ見据えた上で。
「わかりましたよ。ぼくも黒騎士様が信じていることを信じることにします」
「うん。そうしてくれるとありがたい」
「ですが!!」
笑って前を向こうとしたところで、ライラからの声に引き戻された。
「これからもぼくは、黒騎士様が損をしそうだと思えばいつだって反対の声はあげますからね」
声をあげる、ということは、最終的な決定権は俺に譲ってくれるという宣言なのだろう。
「わかった。頼りにさせてもらう」
言って笑うと、ライラも笑った。
「よし!! それじゃあ行くぞ!! いざプラスタ!!」
「おー!!!」
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