パズルのようなポップな窓

表裏一体

「ひーめー!」


私、日野ひの 姫衣めい は、周りから「ひめ」と呼ばれている。単純に名前のせい。別に絶世の美女という訳では無い。客観的に見て、"普通に可愛い"程度だと思う。





「…あの、日野さん。明日、僕、あなたに告白します。だから、ささっと振ってください。」


「えーっと、ちょっと話が見えないのですが…。」


私は今、同じクラスの男の子に呼び出されていた。うっすら会話した記憶があるくらいで、敬語かタメ語か迷うくらいの仲。


「嘘コクさせられるんです、明日。隣のクラスのヤツらに。」


"隣のクラスのヤツら"で思い浮かぶ3人は、学校中が知っている、いわゆる問題児だ。


「運悪く同じ委員会なんです。それで、僕が気弱だってバカにしてくるようになって。まぁ、1番は僕の名前を面白がってなんですけど。」


「名前…星野ほしの 桜士朗おうじろう。」


「あ、知ってくれてたんですね。まぁ、そう、"ほしのおうじ"ですよ。似合ってないでしょう?気に入ってはいるんですよ。親から貰った名前だし、自分で言うのもなんですけど、素敵だなって。」


「…わ、私も!素敵だと、思います。」


「ふは、ありがとうございます。でまぁ、僕が "おうじ" だから、"ひめ" に告れっていう、なんとも単純な話で。」


「でも、あの、それ、私に言っちゃって大丈夫?」


「巻き込んでしまうことになるので、言っておこうかなって。」


「なるほど…。」


桜士朗くんは、かなり独特な考えを持っているらしい。少し話しただけで、その感性に触れられるほど。


「あ、それでですね、日野さん。僕、嘘コクはしますけど、本当に好きなんですよ。あなたのこと。」


「…は、今なんと。」


「そのままの意味です。」


「ちょっと理解が追いつかないのですが。え、じゃあなんで、振ってくれ、なんて言うんですか?」


「だって、嘘コクのフリしたガチ告白で、ガチ振られしたらキツくないですか?それならいっそ、自分の気持ちをスッキリさせてから、本気で嘘コクしよっかなって。」


…感性が独特にも程がある。


「ということで、僕の気持ちは既に伝わっているので、明日はのびのびと嘘コクをします。僕のせいで注目を浴びることになると思うので、先に謝っておきます。ごめんなさい。」


桜士朗くんは、そう言い残し、突然帰った。

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