第10話 一問一答

 Q.未来?


 A.僕たちは未来を見ることができない。僕たちの中にある物語の形をとった出来事はすべて過去に起きたことであり、例外はひとつとして存在しない。現在において未来の物語は存在せず、それを読み取ることは誰にもできない。それに比べれば過去の出来事にあれこれと意味づけをすることは、驚くほど簡単な作業である。それは何も歴史家の専売特許というわけではないのだ。過去と現在が地続きに存在する以上、その偶然性を、運命という名の絵具で彩色することはむしろ自然なこととさえ言える。

 そうでなければ、もしすべてが偶然であるならば、誰に生きる意味など見つけられるだろう。

 天と地があり、ときどき雷が落ちる。これでは、つまらない話だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る