第4話

薬草を採取してギルドへ戻る時には、夜になりかけていた。


「何とか夜までに帰ってこれたか。俺はギルドへ行くが、ルナはどうする?」


「私もギルドに用がありますので、ご一緒しようかと思います。」


「おっけー」


詩音たちはギルドへ向かった。




 ギルドの受付で、詩音は任務の清算をしていた。


「任務お疲れさまでした。こちらが報酬になります」


「ありがとう」


「こちらこそありがとうございました。それで、そちらの方は? あっ、ルナさんでしたか。右京さん、ルナさんとパーティを組んだんですか?」


「ルナと知り合いなのか? いや、ルナとはそこの森で会って、薬草の場所を教えてもらってたんだ」


「そうなんです。右京さん、あのビッググリズリーを一人で討伐しちゃったんですよ!」


「そうだったんですね。なぜルナさんがうれしそうに語るのかわかりませんが、とにかくビッググリズリーを討伐なさるなんてすごいですね。それ分の追加報酬もお支払いします」


「ほんとに!!カッコよかったんですよぉ!! 一瞬で三回も蹴りを決めて……」


「わ、分かりましたから。というか、おふたり共とても仲が良いみたいですし、パーティを組んでみては?」


「ぱ、パーティなんて!? 私と右京さんがですか!? そんな、私なんて、でも……えへへ」


「いやなら他をあたるk」


「いえ!! ぜひお願いします!!!」


「お、おう。じゃあ、よろしくな!ルナ」


「はい!」


「おめでとうございます!それではお二人をパーティ―として申請しておきますね」


詩音とルナはパーティーになった。


「右京さんはこの後どうするんですか?」


「あ、今日の泊まるとこ考えてなかったわ。どうしようか」


「あ、あの! もしよければ私の家に来ませんか?」


「え?」


詩音はルナの家に泊まることになった。




 ルナの家は大通りから少し外れたところにある小さな家だった。


「つきましたよ。さ、遠慮せずに入ってください!」


「お、お邪魔しま―す」


「少し散らかってますけど」


内装は一人分のベッドと小さな机が一つずつ、そして奥に大きな本棚があった。


「すごい大きな本棚だなぁ。ルナは読書が好きなのか?」


「それもそうなんですけど、本棚の本はほとんどが研究資料なんです」


「ルナは研究者だったんだな。妹を思い出した」


「妹さんがいたんですか?」


「うん。愛梨っていうんだけど、ルナと同じで研究が好きだったんだ」


「そうなんですね。(私、妹みたいに見られてるってことなのかな……)」


「ん? なんか言った?」


「いえなにも」


「でもいま妹みたいに見られてるとかなんとか」


「聞こえてるんじゃないですか!!」


「愛梨を思い出したってだけだよ。ルナは大事なパーティーメンバーだし」


「んんんんん―!!! もう、それでいいですよ。今は、ですけど」


「え?」


「そんなことより、今日はもう寝ませんか?」


「う、うん。じゃあ、俺は床を使わしてもらうよ」


「ベッド使ってくださいよ」


「ベッドはルナが使うだろ?」


「二人で寝ればいいです!」


「いや、狭いし。床で寝るの慣れてるからここでいいよ」


「床で寝るの慣れてるってなんですか……。わかりました。右京さんがそれでいいのならそうしましょう。…………ハァ」


「? おやすみ」


「おやすみなさい」


特に何も起こらぬまま夜が明けていくのだった。




 早朝、


「んーーー。ふぅ。右京さん、おはようございます。あれ? 右京さん?」


詩音は部屋にいなかった。


「どこ行っちゃったんだろ」


ルナは玄関を開けて外を探す。すると、


「ふーーーーーっ」


詩音は站椿たんとうを行っていた。


「早朝トレーニングですか?」


「あ、ルナおはよう。うん、毎朝これしないと始まったって感じしなくて」


「おはようございます。ルーティーンてやつですね。気持ち、わかります」


「よっと」


詩音は站椿を辞め、ルナに向き直る。


「タオル、貸してくれない?」


「解かりました。右京さん、汗を拭いたら朝食にしましょう」


「りょーかい」


詩音とルナの朝の時間はゆっくりと流れていった。




 ギルド内、


「この、ドラゴン討伐に行きたいのだが」


女剣士が受付でクエストを選んでいた。結った長い赤髪が特徴の背の高いきれいなお姉さんといった容姿だ。女剣士は軽装だが要所はしっかりと守ってくれる動きやすいタイプの鎧と、背中に両手剣を装備していた。


「申し訳ありませんが、このクエストはおひとりで行かせられないようになっていますので」


「なに? 一人ではいけないのか?」


「おいネーチャン! お前が一人でドラゴン討伐なんてできるわけねーだろ!」


「優しいおじさんたちがパーティーになってあげようか?」


「がははははははは!!!!!」


「う、うるさいぞ!!」


ギルドはとても騒がしかった。


そのとき、詩音とルナがギルドに入ってきた。


「さーて今日もクエストやるかぁ。ルナ、頑張ろうな!」


「はい! えーっと、セシルさん。何かいいクエストはありますか?」


「あ、右京さんにルナさんですね!少々お待ちください。ほら、クレアさん!次の方が来ましたからどけてください!!」


「ん?お前たち、クエストを探しているんだな? ちょうどいい。私とドラゴン討伐に行ってくれ!!!」


「え?」


「はいーーーーー!!!!!?????」


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