第3話 まどかとさとる(2)

「あ、見て見て! あじさい!」


 プリーツスカートをひるがえし、まどかが花壇に駆けよった。

 さとるは落ち着いた足取りで後を追い、


「きれいだよね。おとといくらいから咲きだしたんだよ」

「へぇ~」

「僕たち、毎日この道通ってるんだけどな」



 もっともなことを言われ、まどかは恥ずかしそうに笑う。




「う~、朝は走るし、帰りはさとるのことしか見てないもん」




 不意をつかれたさとるはわずかに目を見開く。

 まどかは自分の発言のインパクトに気づいていないらしく、破顔してあじさいに見とれている。


「ふふ。ぼくもまだまだだね」


 さとるは、まどかの隣にしゃがみこみながら言った。


「まだまだ?」

「うん」



「まわりの変化に気づけないくらい、まどかのこと見るようにしなくちゃ」



 ほほえみかけられたまどかは、頬を染めて瞬きをする。

 照れ隠しのようにあじさいに向きなおると、事故らないでよ、とつぶやいた。

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