談笑

 残った強化剤を片っ端からシリンダーへ放り込みながら、シャンデリアを見上げる。俺たちが消耗して、助けを求めざるを得ない状況を狙っていたのだろう。戦いの中でアドレナリンが湧き出し、頭が冴えている。


 「その剣さえ寄越してくれれば、この階層は抜けさせてやるよ。アンタらの負傷具合を見たところ…ここを抜けても野垂れ死にだ。まだ死にたくはないだろ?」

 「そちらの人数を聞いておきましょう。1人じゃ話になりませんよ」


 三井が交渉を開始した。奴も剣を手放したくはないのだろう、声に力が篭っている。傍らで気絶していたパトリシアの目が開く。

 (大丈夫か? 今はまだ休んでおくと良い。先は長そうだ。)

 (えっと…わたし…どうなって……)

 (燃える剣のせいで気絶していたんだ。渡した俺たちが悪かった。)


 パトリシアは会話を終えると一瞬でまた眠りに落ちた。休んでおけとは言ったが…


 「随分と仲良さそうじゃねぇか、兄ちゃん。癒されたか?」

 「まあ…否定は出来ん」

 「はっはっはっ! 案外素直なんだな。正直最初はただのジャンキーかと思ってたぜ」

 「俺もアンタのことは厄介なおっさんだと思ってたぞ。実際今も思ってる」

 「おあいこってとこか?」

 「だな」


 戦いは絆を生むこともあるらしいが、これもそうなのかも知れない。このパーティが気に入ってきている自分が居るのも確かだ。


 「話が纏まりました。彼らは全員で3人、得物は教えてはくれませんでしたが、報酬は回復材4本で話をつけることが出来ました。私とキイルトースさんは彼らと次フロアの安全を確認してきます。吉村さんはパトリシアさんの警護をお願いします」

 「了解したが、このフロアは2人で大丈夫なのか?」

 「彼らがそれは保証してくれています。では、行きましょう」

 「気をつけろよ」


 吉村とパトリシアを残し、俺たちは次のフロアへと向かうこととした。何事もなければ良いが。

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