宝箱

 一悶着あった後、俺たちは順調に1階層の探索を進めていた。三井は同業者狩りだが、出す指示や怪物への対処は的確だ。殺すわけにもいかない、子供も見ている。


 「宝はまだ見つからないのか? 出鱈目な指示を出しているんじゃ無いだろうな、貴様の首をへし折ることもできるのだぞ?」

 「つかれたの…」

 「こいつの指示は正しい、1階層に宝があること自体が珍しいんだぞ。だが、ダンジョンに入ってから3時間は経っているからな、休憩するのもいいんじゃないか」

 「なんて優しい方なんだ! しかし、そう簡単に休憩をしていたら目的地にも辿り着けませんよ? 前回で学んだことだったのでは?」

 「チッ、くどい言い方しやがる。お嬢ちゃん、おぶってやるから少し我慢だ」

 「わかった!」


 言い方は気に食わないが、ごもっともなお言葉だ。お嬢ちゃんにはおんぶで我慢してもらおう。


 「皆さん、着きました。これが2階層へ行く列車ですよ」


 1時間程経った頃だろうか、改札で仕切られた駅のホームへたどり着いた。線路の上には電車が停まっている。日常で飽きるほど見た光景だ。


 「相変わらずこんなヘンテコな…」

 「で、でんしゃ?」

 「何なんだこいつは」 


 ダンジョン初心者の2人が困惑しているのが見て取れる。慣れるまではかなり時間がかかるだろうな。

 

 「吉村さん、改札の右隣の壁を壊してみてください。剣で突いてみた所、どうやら空洞になっているようです」

 

 隠し部屋か? 斧で壁を叩き壊す。中は狭い小部屋になっていて中央に宝箱が1つ鎮座していた。この瞬間だけは、つい表情が緩む。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る