第13話 二回目の音楽の授業
チャイムがなった数秒後、「失礼します」と、小さな声で相澤先生が教室にやってきた。
今日半どんな授業をするんだろう。柄にもワクワクしている自分がいる。
先週から参加したばかりだから僕は基礎からの勉強になるらしい。
先生は僕を見るやいなや、ズンズンと机の上まで歩み寄ってきた。
そしてドン、と数冊の本を僕の机の上に置いた。先生のその顔はとてもにこやかだった。
それは、「音楽とは何か」に関する書物だった。いわゆる教科書ってやつだろう。
「とりあえず、これが皆んなに配っている教科書、専門書だよ」
「あ、ありがとうございます。こんなに多いんですね」
予想はしてたけど、やはり「教科書」という単語に僕は弱いらしい。
少し尻込みをしまいそうになった。
でもめげないぞ!そんな僕を察してか、相澤先生はこう続けた。
「まぁ、理論以外、楽典ともいうけどこれらは選択科目で、最初に渡した音楽の教科書は僕の講義ではあまり出てこないけどね」
「な、なるほど…。じゃぁ音楽理論をメインでやってくんですね!楽しみです」
「流石渉君!君も着々とこちら側の人間になってきたようだね… 」
そんなやり取りをしていると他の生徒から「早くしてくださいこの間の授業の答え合わせを求めます」「ほらそこ、仲間になりそうだからと言って勧誘しないでください」とお馴染みの生徒からのツッコミで先生は我に帰った。
「おっと、これは失敬。それじゃこの間の宿題行きまーす」
そう言いながら先生は黒板の前に足を運んだ。
教卓に目線を落として先週の問題の答え合わせでもやるのだろう。
僕はその間、教科書をひたすら眺めていた。
読めば読むほど面白い。音楽の可能性の無限大を壮大に感じた。
小学生や中学生にちょっと教えられた記憶が蘇ってくる。
「長調」は暗い感じで、「短調」は暗い感じ…とか漠然としか覚えてないけど。
まずは音楽の基礎知識から勉強だ。気合を入れる。
そんな僕の横でほまれ君は、必死に教科書を睨めっこしている僕を見て微笑んでいた。
一通りみんなの答え合わせが思ったらしい。教室内がざわざわし出した。
ほまれ君も答え合わせは終わったようだ。
今度は先生が僕をデスクに呼んだ。
「ごめんよ、渉くん似は難しいと思って先週は宿題を出しなかったから」
「はぁ、確かにみんなのレベルには到底追いつけませんませんもんね… 」
自分で言ってて悲しくなってくる。
いた、こればっかりははしょうがない。
「ということで、渉君用に問題集を作ってみました! 」
満面の笑みである。
「これから始めたら、だいぶ知識がつくんじゃないかな。基礎を分かりやすくまとめたんだ、もちろん僕の大好きな音符計算問題も出てるよ」
満面の笑みから不敵な笑みに変わった。本当この人は百面相が得意な人だ。
それだけ「音楽」が好きなんだろうとひしひしと伝わってきた。
席に戻ってプリントを見てみたら、僕でも分かりやすいように「音楽の基礎」から書かれていた。
とは言っても、義務教育で音楽の授業は受けていたので基本的なものは覚えてる。
なので楽譜の読み方や簡単な記号なんかは応用が効いてすんなりと脳に入ってきた。
特に、中学ではやってこなかった「楽譜や記号の書き方」なんかはとても刺激的だ。
ト音記号の書き方に、書き順や置き方があるなんて思いもしなかった。
五線譜も下から順に「第一線」「第一官」とちゃんと名前が付いている。
今日だけでとても学んだ気がする。基礎の奥深さに感服した。
最後にしたの余白に先生が書いたであろう手書きのメッセージが記されていた。
「一応基礎はこんな感じだよ!これさえ分かればだいぶ応用が効いてくると思うよ。そして今回の君の課題は楽譜の書き方とその意味や使い方をマスターすること! 」
上記にはお手本の楽譜通りに書き写すための五線譜が載っていた。
ちゃんと記号もお手本通りに書けるようになる為の空欄が用意されていた。
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