本登録

次の日―――――




そして俺たち6人は仮パーティーからギルドに本登録されたパーティーとなった。




他の所は俺たちとは違う日程で最後の実戦訓練を行う――――――


いや、ほかの所といっても多くがリタイアしていて、養成所に入った当初は60人の定員ピッタリで入ったにも関わらず、今は俺たちを含めて20人程度しか残っていないらしい。




そう考えると誰もリタイア者を出さずに本登録まで持ってこれた俺たちは最初のギルドによる編成が上手くいっていたのだろうと思う。








ギルドで本登録をして今までお世話になった教官から褒められたりしながら探検許可証を受け取る。




てっきり上辺だけの言葉なのかと思っていたが、教官が突然泣きながら




「お前らは本当によくやったよ…」


と言い出して面食らった。




あんまりにも泣き止まないからその時ギルドに居た他の探検者にどこかに連れていかれていた。




ゴリアテは昨日のネズミに瞬殺された話で教官に笑われたりしていたが、なんだかんだゴリアテは教官に愛されているようだった。




そしてその夜に俺たちはパーティーメンバー全員で皆で本登録出来たことに対するお祝いのパーティーをやることにした。




料理は養成所の食堂のおばさんに頼んで出してもらった。




ご馳走、とまでは行かなかったが十分すぎるほどの料理を出してもらえた。




普段出てくる料理は豆のスープとスクランブルエッグとパンみたいな質素な物なのに、今回は鳥の丸焼きを筆頭にコーンスープ、アップルパイ(これはシナモンがかかっていて美味しそう)そして最後にどこから取ってきたのか分からない多さの果物!




いつも出してくれよ!そういうのをよ!


と言いたかったが、噂だと食堂のおばさんはかなりの手練であるという噂があるからさすがに辞めておいた、本登録後当日に失踪、なんてことがあったら笑い事ではない。




そしてみんなで食堂の丸い木製のテーブルを囲み、かなり使い込まれてるであろう椅子に座る。




探検者という職に就いている以上、この光景があと何回見れるかは分からない――――――




いや、そういう考えはやめにしよう。




俺たちはみんなでずっと探検をして、歳をとったらこの話をつまみにして酒を飲むんだ。




そんなことを考えているとアルトが、




「ほら!お前らなんでそんな真面目くさった顔してんだよ!パーティーだぞ!ほら!」




と言いながらみんなにアップルパイを取り分ける。




「み…みんな…お…おれといっしょに…いちねんかんもいてくれてありがとう…」


ゴリアテが泣きながら言う。




「お前昨日死んでたかもしれないのによく言うぜ、だいたいあそこで…ヴッ!」


ヴィルが言ったが、アルトに脇腹をつつかれて途中で止められた、多分止めなかったら延々と言ってただろう…




カミナはひたすら鶏肉を頬張っていて、ニアは果物にご執心だった。




「でも俺たちが6人でここまで来れたのってほぼ奇跡なんじゃないか?他のパーティーは養成所の訓練がキツくて村に帰っちまった連中もいるみたいだしさ。」




俺はそう言った。




他にも思うところはあるが、話しすぎると変なやつだと思われそうだからやめておいた。


そうすると外から




「その通りだ!!ルドー!!お前たちは最高のパーティーだ!!!」




と大声がする。




あぁ…教官だ…




酒でへべれけになった教官は俺たちには手が付けられない。




「お前らぁ…よくやったなぁ…俺が養成所の時は6人パーティーだったのが1人減り2人減りして3人パーティーだったんだ…」




でた、この話は酒が入ると教官がいつもする話だ。




教官は昔やった実戦訓練の時、1人抜けて、2人抜けてをし、3人のパーティーになってしまったらしい。(ギルドには一人で行動する奴もいる)




しかしその3人のパーティーの男女比率は残念ながら男2の女1だったらしく、最後の実戦訓練を終えると2人は教官を置いてどこかへ行ってしまったらしい。




これがいつも教官の酒が入ると話す事だ。




ずっと耳元で教官の大きな声が聞こえているから耳がキーンとしてくる。




見かねた食堂のおばさんが寄ってきて突然教官に手刀を振りかざした。




えっ…?




もう少し穏やかな方法があったのでは…?




と思ったが既に教官は床でのびていた。




やはり噂は噂でなく本当だったらしい。




食堂のおばさんは




「まぐれよ、ま・ぐ・れ」




と言っていたが多分嘘だ。




まぐれにしては手つきが慣れていすぎていた。




教官が運ばれた後、嵐が過ぎたような気がしてみんなで笑いあった。




その後俺たちは、それぞれの探検者になった理由を話し始めた。


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