第4話 本当に怖いのは人間だっていう

――――二ヶ月後!



「ギブアーーーーップ!!」

「どうじゃった? やっぱり魔の四天王には勝てんかったかのぉ?」

「やっぱりって何だよ! 魔の四天王には勝ったわ!」

「ほーん、やるもんじゃのぉ……」

「お互い魔力が尽きるまで一週間ぐらいずっと戦ってたけどな!」

「なかなか根性が身についたではないか」

「マジでふざけんなよ!!」


 こいつ、本当に他人事だと思いやがって……!


「ほんなら何がマズかったんじゃ?」

「魔法は便利だけど、呪文がなげーの! しかも強い呪文ほど長い!!」

「そりゃそうじゃろ。ヤベー魔法が簡単に使えたらマズいじゃろ?」

「戦闘中にクッッソ長い呪文を集中力を切らさずに唱え続けるとか無理だろ!!」

「そこは仲間に何とかしてもらうとか、やりようがあるじゃろ」

「特定の魔法しか効かねー奴も出てくるし、暗記にも限界があるんじゃい!! 毎回棒立ちでカンペ見ながら魔法唱えるわけにもいかねーだろぉ!?」

「ほんで誰に負けたんじゃ?」

「ハイパーゴーレムとかいうヤツだよ!! 無機生命体専用の特効魔法とかいうピンポイントな魔法しか効かねーの!! 呪文もメッチャ長いしよぉ!! おまけに自動回復持ちで何重にも魔法をかけないと倒せないとかいうクソみたいな呪文耐久しやがって!!!!」

「ふーむ……」

「魔神か魔王か知らねーけど、これ考えたヤツはマジで根性が腐ってるだろ!!」


 もう嫌になってきた。何でこんな苦労してまで自分と関係ない世界を救わないといけないのか……。泣きそう。

 そんな俺に神様は優しい声をかけてくる。


「よし、ほんなら今度はお前さんの望む能力を授けよう」

「望むって……マジ? なんでもいいんですか?」

「さすがになんでもとはいかん。魔王軍団を倒すための能力を一つだけじゃ」

「触れた者を皆殺しにするとか?」

「ヘタに物を触れんくなるぞ。もう少し考えてから言ったらどうなんじゃ」


 普通にダメ出しされた。まあ自分でもちょっとやりすぎとは思ったし。

 うーーーーん、何にしようかなぁ?


「魔神の力で生み出された物なら何でも消滅させる能力……とか? こう手を向けてパッと消す感じの」


 都合よすぎるか?


「本当にそれでええんじゃな?」

「えっ、アリなんすか?」

「ええんじゃな?」

「えーーーー……そんな念を押して聞かれると困るんですけど」

「まあまあ、ダメでもやり直せばええじゃろ」

「そうですけどぉ……」

「とにかく、やってみるんじゃな」





――そして二ヶ月後!



「ギブアーーーーップ!!!!」

「どうじゃった?」

「やーーーーっと魔王に会えました!!」

「かなり進んだのぉ」

「まあザコは能力のおかげで楽勝でした。四天王もゴーレムも魔神の力が消えれば、全然苦戦しなかったですよ」

「ほーん……あれじゃ、あれ、味方の裏切りイベントとか無かったかの?」

「ありましたよ。魔王の偽情報にだまされた一般人に襲われたりとか」

「乗り越えられたかの?」

「どうにか。じゃないと魔王に会えないでしょ」

「なーんじゃ、つまらん」


 は?


「そのへんでギブアップするじゃろうなーと思っとったのに」


 ……こいつの性格が悪いのは知ってたし、怒るだけ時間のムダだ。


「そんなことより! 魔王って俺と同じ世界の人間じゃないっすか!! そこらへんにいそうなオッサンでしたよ!!」

「ほーん? そうなの?」

「反応うっっす!!」

「ほんで、何が無理だったんじゃい」

「魔王の野郎、銃を持ってたんですよ!! 魔王なのに! 卑怯くせえ!! しかもなんか扱い慣れてるし!!」

「勝てなかったんか?」

「なんぼレベルアップしても生身じゃ銃には耐えられないでしょ……」

「はー、なるほど。これまでの理不尽な敵は魔王のアイデアだったんじゃなぁ……。魔神のヤツにしてはおかしいと思っとったんじゃよ」


 今まで俺が苦労してきたのは、同じ世界のオッサンのせいかよ!

 クッソ野郎、絶対に許さんからな!!!! 次に会ったらボコボコにしてやる!!


「どうやったら、あのクソ魔王に勝てますか!?」

「飛び道具が効かない能力とか、どうじゃろ?」


 うーん、でも他のヤツに苦戦して魔王までたどり着けないんじゃ意味がないしな。ちょうどいい能力が無いものか……。とにかく魔力∞の魔の四天王が邪魔すぎる!

 あいつだけ四天王の中でもケタ違いに強過ぎるんだよなぁ……。ぶっちゃけ魔王よりも強いだろ。他にもハイパーゴーレムも何とかしないといけないし……。

 魔王軍団、強すぎねーか?


「……俺、もしかして魔王に勝つまで元に世界に帰れねーんですか?」

「いや普通に帰れるぞい」

「えっ? そういうのは早く言うべきだろ」

「でも帰りたいとか言い出さなかったし……」

「あのさぁ……」


 途中で帰りたいとか泣き言を言うのはカッコ悪いと思ってたから言えなかっただけなんだけど、このへんの話題に触れるのはやめとこう。ヤブヘビになるだけだ。


「どうじゃ? 一度帰ってみるかの?」

「お願いします」

「ほんなら、またの~」


 気がつくと、俺は自分の部屋のベッドで横になっていた。


「夢オチか……。はぁ……」


 時計は少し進んでいるけど、月日までは変わっていない。

 ぜーんぶ夢の中のできごとだった。すっげぇ脱力感。

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