第21話

「ギャアガァアアアーーーーーーーッ!」


 雄叫びをあげるバイラスがこちらに迫る、あんなバケモンに八つ当たりされたら簡単にこっちは死ぬんだぞ。

 ていうか八つ当たりなんかで死んでたまるか。


「ラディア! 私が時間を稼ぐ、お前もゴーレムを盾や囮にして逃げるんだ!」


「逃げるのはミロットさんですよ、私が時間を稼ぎます!」


「何を無茶を言っている、そんなゴーレム2体では時間稼ぎすらできないだろう」


 確かにこのゴーレム2体なら無理だろうな、だからって見捨てるわけにもいかないだろ。

 と言う訳で猫を被るのをそろそろ辞めます。


「ゴーレムクリエイト!」


 俺が生み出したゴーレムは以前を倒したディグダスネークを元にして生み出した新たなゴーレム、スネークゴーレムである。


 ちなみに大きさは結構大きめにしている、本来の ディグダスネークの数倍の大きさだ。

 胴回りだけでも大木くらいの大きさにして長さは多分バイラスより長い。


 そのサイズのスネークゴーレムを4体ほど出してバイラスにけしかけた。


「……まさかあれだけの大型ゴーレムをお前は操るのか?」


「まあゴーレム魔法ってやつも案外悪くないってことですかね。それよりさっさと逃げましょう」


「……分かった」


 後ろの方でバイラスとスネークゴーレムたちが怪獣大決戦をしているが、そんなものを観戦する余裕はない。

 さっさとこの湖が撤退しなければ。


「ギャガァアァアアアーーーーーーーッ!」


 バイラスのヤツがまた唸り声を上げる。

 突然俺たちが逃げようとしていた方面に巨大な岩の壁が現れた。


「まさかヤツは土魔法を操るのか!? こちらの逃げ道を塞ぐつもりだ!」


 ミロットの意見は正しかったらしい、こちらを取り囲むように高く巨大な岩の壁は形成される。

 サルってヤツは悪知恵が働くらしいな異世界でもよ。


「ミロットさんどうしますか?」


「ふんっこの私をなめるなよ、こんなこともあろうかとのぉおおおおおおっ!?」


 ミロットのヤツがなんかかっこいいことを言おうとしたらタコ足に捕まった。

 もうギャグマンガかよって感じだ。

 それにしてもなんということだやはりあの巨体に見合うだけのタコ足は、リーチが予想以上に長い。


 あっという間にミロットはバイラスの近くへと行ってしまった。バイラス自身はというと俺が生み出したスネークゴーレム未だに戦っている。


 あんな戦いに巻き込まれたらミロットなんか一瞬でひき肉になっちまうんじゃないのか?


「こんなところでやられるかっくらえっ!」


  タコ足に捕らえながらもミロットは攻撃魔法を発動させた、バイラスに向かって火球を数発打ち放つ。

 しかしバイラスは全身ずぶ濡れだったからかを受けたところで少しもダメージになっていないようである。さっきまで湖の底にいたからな~。


 スネークゴーレムがバイラスに絡みつき、ヤツが暴れないように奮闘する。

 なかなか決着がつかないな、このままではミロットのやつを捕まえているタコ足がミロット絞め殺してしまうかもしれないぞ。


 はっきり言ってこれはピンチだ。

 正真正銘かなりのピンチである。

 身も蓋もない話をすればミロットとは今日あったばかりのほぼ赤の他人だ、見捨てるという選択肢もありかもしれない。


 しかしミロットは美女だ、顔もよければスタイルもいい、それが猿の餌になってもいいのか?

 美人というのは人類の財産である、そしておっさんには人権はない。これらはとても悲しいが世の心理というものだ。


 ならばチビエルフとしてこの異世界に転生してきた俺は何をすべきなのかだろうか?


「うぉおおおおっ! こんなところで死んでたまるかぁあぁああーーーーーーっ!」


 ミロットが雄叫びを上げて攻撃魔法を連発している。ヤツ自身も生きる気満々か。


「ふっなら助けてあげますよ」


 俺はやれるだけやろうと決めた。どうなるかなんてわからない。

 あとはなるようになれだ!


「ゴーレム クリエイト!」


 バイラスが暴れる湖の湖畔が激しく揺れる、そして湖自体が動き出した。

 俺のゴーレムを生み出すこの能力は別に石や土、それだけを対象に発動するもんではない。


 つまり水を素材にしてゴーレムを生み出すことあってできるんだぜ!

 ……今までやったことなかったけどな、どうやらできたみたいだ。なんか博打で儲けた気分である。


 俺は湖の水全てを使って超巨大なスネークゴーレムを生み出した。

 動き出したスネークゴーレムはバイラスを一瞬で飲み込んだ、スネークゴーレムの胴体あたりが膨らんでいる。


 そこで バイラスがもがき苦しんでいた……あっ。


「うごぼぼぼぼぼぼっ!」


 やべっミロットのヤツも溺れそうになってる。

 早く助けなきゃな。


「おーいその猿を吐き出せーー!」


 俺の指示に従い超でかいスネークゴーレムはお腹にいるバイラスを口の方へと移動させてペッと吐き出した。

 バイラスが地面に激突する、これっミロットのヤツも死んだんじゃねえか?


 あっいや土でできたほうのスネークゴーレムがミロットをくわえてこちらに1匹戻ってきている、どうやら生きてるみたいだな。


 土のスネークゴーレムはミロットを俺の近くにそっと置いた。意識もあるみたいだ。


「しっ死ぬかと思った……」

「生きてるんだから問題ないだろ?」

「それは……そうだが 」


「まずはあの猿をぶっ飛ばすからちょっと待ってろ」


「ラッラディア、お前は……」


 ミロットが何か言いたそうだがとりあえず無視だな、今は絶賛大物狩りの途中なんでね。


「ゴーレムクリエイト!」


 先ほどの湖の水を使ったビッグスネークゴーレムで俺は確信した。もっとでかいやつがいける気がする、というわけでゴーレムをクリエイト。


 地面がメキメキと盛り上がる途方もない量の土が盛り上がる。

 現れたのは壁だ、モンスターを元にしてない プレーンゴーレムで足だけが生えてる巨大な壁のゴーレムを俺は生み出した。


 こいつの攻撃手段はただ一つ、前に向かって倒れこむのみだ、要はコイツはぬりかべだな。

 ぬりかべゴーレムだ。


「いけっぬりかべゴーレム!」


 俺の命令と同時にぬりかべゴーレムは前へ向かって倒れこむそこにいるのはバイラスのみで他のスネーゴーレムはとっくに逃げている。


「ウキウキキィイイーーーッ!?」


 バイアスが変な鳴き声を出す、何か言いかけたみたいだがぬりかべゴーレムはそんなことは一切関係ないとばかりに倒れ込んだ。

 地面がそれなりに揺れる、結構な衝撃であった。


 はぁ~い完全勝利っと、ざまぁ見ろタコサル野郎め。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る