第15話

 そこでは凄まじい激闘が繰り広げられていた。

 全身が茶色の土っぽい体色と黒い斑点を持つトカゲを相手に多くのリザードマンたちが戦いを挑む。


 トカゲの方がリザードマンたちより二回りほど大きい、その大きさを生かし リザードマンたちを長い尻尾薙ぎ払い、噛みつき攻撃する。


 リザードマンたち素手だ。トカゲの攻撃をなんとか躱している間に他のリザードマンがトカゲを包囲する。リザードマンは数の多さで圧倒していた、トカゲを包囲が完成する。


 リザードマンたちはその数を活かし、暴れるトカゲを前後左右から挟み撃ちにする。

 リザードマンの1体がトカゲの背に乗り首元に向かい両手を回す、首を閉められたトカゲは物凄い勢いで暴れまくる。


 他のリザードマンたちが暴れるトカゲの抵抗を無力化する為に四本の足にも捕まった。

 激しい肉弾戦の攻防だ、お互いに引かない。

 やがてトカゲは気を失ったのか力なく倒れた。


 リザードマンたちの勝利である。


「なんか今物音が聞こえなかったか?」

「は? 気のせいじゃないか?」


 そんな冒険者たちの会話が聞こえる、どうやら視界を共有しているゴーレムたちが耳にした言葉まで俺は理解できるらしい。


 これは新たな発見だな、ちなみに今さっきまでミニチュアサイズのリザードマンゴーレムと黒紋蜥蜴が戦っていたのは、そんな会話をしている 冒険者たちの近くにある岩と岩の間にある小さな隙間だ。


  その隙間で繰り広げられた小さな戦いを制した リザードマンたちは戦利品である黒紋トカゲを数体で運んでこちらに戻ってきている最中である。


 そんな感じの戦いがこの広い荒野の隅っこで行われていた、異世界すみっこバトル。


 視界を共有している俺からすればずいぶんとまあ派手な戦いで見応えバッチリなのだが、冒険者たちにとってみれば存在すら気付かない戦いなのだ。


 そんな小さな戦いを俺はとても楽しんでいた、ミニチュアリザードマンたちへの応援にもついつい熱が入ってしまった。


「おっ戻ってきたか!」


 戦いを応援したり、のんびりしている俺の元にミニチュアサイズのリザードマンゴーレムたちが仕留めた黒紋蜥蜴を運んで戻ってきた。


これで黒紋蜥蜴を捕まえた赤黒トカゲの数は合計10体 、依頼で求められていた数に到達した。

 報酬はトカゲ1体につき1万シルトのだと記されていたのでこれだけで十万シルト、悪くない稼ぎだ。


「よしよしそれじゃあ戻るとするか」


 俺はゴーレムたちに指示をして撤収する準備に入ろうとした。


「…………ん?」


  見るといつの間にか俺たちの近くにそこそこ大きな穴が開いている、まさかと思った俺が指示を出すよりも早くミニチュアサイズのリザードマンたちがその穴になだれ込む。


「シャアアァアアーーーーーーーッ!」


 蛇の威嚇する声が聞こえた、その穴はやはり ディグダスネークが堀った穴だったか。

 穴から飛び出した大きな茶色の蛇に普通にビビる 俺だ。


 アオダイショウなんか比べ物にならないくらいデカイ、そんな蛇に対して一切ビビることなく機械的に攻撃をするのは2体のリザードマンメイジである。


 それぞれが火球を放ち、ディグダスネークに火球が直撃する。ってかヤツの身体に張り付いたミニチュアリザードマンたちが巻き込まれて……すまんミニチュアリザードマンたちよ……。


 瞬殺だった、しかしビビったな~やはりここは危険なモンスターがいる場所だ、油断ならないな。


「サンキューなお前ら」


 俺はリザードマンメイジと無事だったミニチュアリザードマンのゴーレム達にお礼を言った、別に返事は返ってこないが別に良いのだ。


 その後ミニチュアリザードマンたちは土に戻して他のゴーレムたちは待機させた後、フレッゾの町に戻る。

 1人の時は油断しないように気をつけよ。


 冒険者ギルドに戻り受付のおねぇさんに捕まえた黒紋蜥蜴を見せると大層驚かれた。

 やっぱりこのトカゲ、捕まえるのが大変な部類のトカゲらしい、そりゃ1匹で1万シルトだからな~。


 チビエルフは受付のおねぇさんに採取の実力を褒められてムフムフとご満悦となり、その日は気分よくご飯を食べて宿でさっさと寝た。

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