第13話

「おーいお疲れ~元気にしてたか?」


 俺はフレッゾの街の外に置いてきたゴーレム達と合流した、もちろん気軽に返事なんて帰ってこない。


 冒険者ギルドで採取依頼を受けた俺はフレッゾの街を外に出ていた。

 ちなみに依頼を受ける際に受付のお姉さんが俺がモンスター討伐の依頼を受けてくるんじゃないけどヒヤヒヤしていると言っていた。


 苦笑いが印象的だったな~…まあ今の俺はチビエルフなのだ仕方がないね。

 そんなことよりも自身が受けた依頼についてだ、俺が受けた依頼は採取依頼だ、しかしこの辺りは荒野しかない。


 だから薬草採取みたいなゲームの序盤にあるような採取依頼はなかった。

 受けた採取依頼は黒紋蜥蜴こくもんとかげの採取依頼だ、このトカゲは全身が茶色で黒の斑点があり手のひらに乗るほどの大きさのトカゲらしい。


 強力な毒を持ち、その毒を利用するために武器に塗ったりあるいは薬の材料として活用するそうだ。

 その黒紋蜥蜴を今日中に10匹捕まえるのが俺の 受けた依頼である。


 しかしこのトカゲ、広い荒野の岩陰やヒビとかの隙間などに入っているらしくなかなか見つからず捕まえる事が難しいらしい。


 だが俺にはそれをどうにかできる方法がある、まあゴーレムだけどな。何しろゴーレムを生み出すしか能がないもんでね。


 俺は合流したゴーレムたちと共にブレッゾ街を離れる。

 周囲に人目がないことを確認してから準備に取り掛かった。


「ゴーレムクリエイト」


 俺が生み出したゴーレムはリザードマン 。

 しかし大きさはミニチュアサイズである。

 問題なのはその数だ、ざっと見た感じ 軽く100体くらいはいるだろう。


 かなりの量を生み出したな、しかしラノベでよくある魔力の使いすぎ的な疲労感はゼロ、本当に百億のMPがあるのかね?


 1体が1体が小さいとはいえこれだけの数ある意味 壮観だ。テーブルトークRPGで使えば臨場感マシマシになる出来栄えのフィギュアっぽいリザードマン達である 。

 あっもちろんリザードマンって基本的にやられる敵キャラだけどな。


 ミニチュアサイズのリザードに俺は指示を飛ばした。


「茶色の身体に黒い斑点があるトカゲ、黒紋蜥蜴ってヤツを捕まえてくれ」


 ミニチュアリザードマン達が頷き一斉に移動を開始した。突撃せよ!


 そうっ俺のゴーレムを使った作戦とは人海戦術である。


 いくら見つかりにくいトカゲと言っても、こっちはリザードマンが100体もの数だ、それに大きさも小さくしてトカゲ達が隠れてそうな岩陰やヒビの隙間にも入ってくれるはず。


 さらにはあいつらゴーレムは俺と視界が共有できる、この荒野に住む危険なモンスターが今どこにいるのかを調べる索敵も兼ねているだ。


 我ながら完璧な作戦だな、俺はニヤニヤしながら そんなことを考えていた。

 するとリザードマンゴーレムの一体が俺の肩をポンポンと叩く、何だと思う見てみると。


 そのリザードマンゴーレムが上空を指差した。

 空を見上げるとそこには 1羽の鳥が飛んでいた、距離が離れているのでわかりづらいが、それでも1m以上はあると思われる結構大きい鳥だ。


 そこでふと受付のお姉さんに聞いた話を思い出した、フレッゾの街の外はモンスターがいる、当然危険なので事前にヤバそうなモンスターについていくつか説明を受けたのだ。


 そのうちの一体にロックコンドルと呼ばれる鳥型のモンスターがいた、肉食で人間も襲う鳥なのだが、こいつらは更に土の魔法を使い石つぶてなどを飛ばして攻撃してくるそうだ。


 さらに力も強くその強靭な鉤爪は攻撃されれば武装した冒険者でもかなりの重傷を負うこともあるらしい。

 けたたましく鳴く鳥野郎がこちらに接近するのを見て、もしかしたらそいつなんじゃないかと俺は思った。


 念のため警戒していると向こうが動く。

 上空から土の魔法を発動して石つぶてを飛ばしてきたのだ。


「どうやらマジでロックコンドルみたいだな!」


 事前に教えられて警戒していた俺は後ろに下がり、武器持ちのリザードマンゴーレム達が前に出てその全てをなぎ払う。

 飛んでくる石つぶてを的確に破壊するとは、やるな武器持ち!


 そして俺は背中に背負ったバックパックをポンポンとする、するとバックパックは少しだけ動いた。

 よし準備は万全だな、ここあのトリ野郎を罠にはめてやろうかな、くっくっくっ……。


 俺はリザードマン達からわざと離れる。

 ある程度の距離が開くとロックコンドルは待ってましたとばかりに旋回しこちらに急降下してきた。


 ある程度近づくのを待つ、すると思いの他ロックコンドルは性格の悪そうな顔をしていた。

 恐らくこのままあのゴツい鳥足で俺を掴んで巣にでも運んで食べてやろうとか考えてるな?


 こんな鳥にやられてたまるかよ。


 勝利を確信したのかロックコンドルは再びけたたましく鳴いた。

 悪いが罠にはまったのはお前だよ。


「やれ!」


 俺が指示を飛ばすと同時にバックパックからちょこっと現れるちいさな影、ミニチュアサイズのリザードマンメイジと魚頭ことサゴンのゴーレムである。


  ミニチュアゴーレムたちが火球と水球を至近距離からロックコンドルにぶち当てた。

 ロックコンドルは悲鳴をあげるとともに地面にボトリと落ちる。


 いくらモンスターとはいえあの至近距離感の直撃だ最初はバタバタと暴れていたがすぐに動かなくなった。


 武器持ちのリザードマンゴーレム達に売れそうな部分があるなら解体してほしいと頼む。

 リザードマンゴーレムは首を左右に振った。


 どうやらロックコンドルは金にもならないモンスターらしい、ロックコンドルの死骸の足を掴んで岩の隅っこに持っていく。


 ゴミが歩く邪魔にならない様に退けるかのように働くリザードマンゴーレムを見ながら、なんと言うか異世界もお金なんだなとしんみりした気分になる俺だ。


 しかしこのロックコンドルを倒したことには大きな意味があるかもしれない。

 俺は早速前々から考えていたことの一つを試してみることにした。


「ゴーレムクリエイト」


 地面がメキメキと盛り上がり先ほど倒したロック コンドルに似た石像の形となる。


「お前は飛べるか? 飛べるのは飛んでみてくれ」


  俺がそう言うとロックコンドルはその重そうな体を何の苦もなく羽ばたかせ、当たり前の空を飛んだ。


 ファンタジーってやつは本当に何でもありだな、そんな場違いなことを考えながら俺は空に羽ばたいたロックコンドルを見ていた。


 視界が共有できる以上空を飛べる仲間がいるというのはとても大きい、これで俺がそうそう不意打ちや奇襲を受けることはなくなったんじゃないか?


 そんなことを考えこのロックコンドルにも周囲を 索敵させる。

 それじゃあ改めてリザードマンゴーレムの人海戦術とロックコンドルによる上空からの索敵で黒紋蜥蜴の探索を再開するか。

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