壊滅的にパーティ需要のないアサシンの俺と組んだ魔法使い(♀)は地獄のようなステータスをしていた
Prologue : Pourquoi avez-vous traduit ce titre ? Ce titre n'a pas de sens.
Season 2. 地獄のクソヒーラー編
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「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
聖剣を構えていたLV99の戦士が、絶叫を上げながらラスボスの眉間へ飛び込んでいった。
なんかよくわかんないけどクッソでかい角と翼の生えた悪魔みたいなラスボスが、最後の断末魔をたててくずれていった。
さっきまでのフロアの陰鬱さがうそのようだった。
巨大なラスボスが断末魔を上げ消えた後、フロア一面に広がっていた闇はびっくりするくらいやっすいつくりの「天国」のような光のエフェクトに変わっていた。
なんだかよくわからないうちに終わってしまった。
私がただ、初回にだけ表示されるストーリームービーを眺めている間に。全部。
「6週目もやっと終わったな……」
だだっぴろい円盤のような真っ白なフロアの中心で、カンストしたLV99の戦士が笑いながら口を開いていた。
「ハルのおかげだな」
天空から光が差し込む中、戦士が振り返って笑った。
「お前がいてくれたおかげで、今回も早く周回マラソンを終わらせられたよ」
「へへ……」
反射的に、変な言葉が出た。
私はどう答えたらいいのかわからなかったからだ。
初めてのラスボス戦はあっという間に終わった。ラスボスが出てきてから流れてくるストーリームービーを10分間眺めてたらいつの間にか終わっていた。
この
何度もラスボスを倒し、何度もレベルリセットをうける。それでもなお引き継がれるステータスを何度も何度も上げ続ける。そんな廃プレイをくり返す戦士とヒーラーは、文字通りゲームを周回することに命を懸けていた。
私がこのゲームを始めた日に拾われてからたった七日間だけのPT。それでも異常なくらい、それはもう異常としかいいようのないくらい効率にこだわってるというのはわかっていた。
だが、こんなにあっけなくラスボスを倒すとは思ってもいなかった。
「お」
戦士が小さな声をあげた。
PTを組んでいたメンバーの前に、小さな光とともに指輪が現れた。
ラスボスを撃破した証、ユニークドロップアイテムだ。
「ハル――」
小さな指輪を手にしていた私に、戦士が笑いながら近寄ってきた。
「なあ。よかったら俺の指輪もらってくれないか?」
「え?」
「俺がもらった指輪は、戦士向きじゃないっぽいんだよ。せっかくこんな最後まで、七日間続けてのラスボス撃破耐久PT組んだんだしさ。お前だったら活用できると思うし――」
はにかむように笑いながら、戦士が私の左手をとった。
「あ――」
とっさに、私は手をひっこめてしまった。
反射的に手を払ってしまった後、とりつくろうように、小さく私から困った笑いが出ていた。
「ごめん、指輪だったから反射的に」
「ああ――」
私を見た戦士が、私の表情から察したのか、同じように苦笑しながらごまかすように口を開いた。
「そうだよな。指輪だもんな。ごめん、俺そういうの全然うとくて」
「大丈夫、大丈夫!」
軽く、強く私は笑った。
左手を、さっきまで握っていた戦士の手の上に乗せた。
ボスに共通するステータスを補正する魔法の指輪。トレードすることのできないその個人だけが所有することのできる装備。トレードができない代わりに、こうやって私に装備させようとしているんだろう。
このただの廃プレイヤーである戦士には、他意なんて思ってもいなかったはずだ。
何かをごまかすように笑いながら、戦士から申し訳なさそうな声が出た。
「指輪を女の子に渡すなんて、ちょっと考えたらわかることだよな。ごめん」
「大丈夫、大丈夫。ただのゲームなんだしさ。ただVRMMOってすごいリアルだから、なんかこう、ちょっと変に意識しちゃってただけで」
「ははっ」
ゲームで指輪を男の人からもらう。
ゲームだと、なんにも考えなくていいのが凄い。この行為に何の意味があるのかとか、これからどうすればいいのかとか、最終的に名前が変わったりするのかとか、そんなことなんかなんにも考えなくていいのがすごい。
ばつが悪そうに口を開きながら、戦士が手に持った指輪にそっと私の指に通した。
デロデロデロデロデンデン☆(やべえ効果音)
――
――
――
「よっしゃああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
「はわ~??????☆」
突然戦士からガッツポーズとともに雄たけびのような声が上がった。
「呪いの指輪がドロップしたときはどうしようかと思ったぜ!!!!」
「なんだこれ~!☆」
無意識に飛び出した大声のあと、私は思わず口を押えた。
「語尾が! 語尾がへんになってるよ~!☆」
「じゃあ私もついでに(笑)」
混乱している私のすきをついてヒーラー(♀)が私の後ろからチョーカーをはめ込んできた。ステータスログに地獄のような文言が流れてきたが私はもうそんなもの追う余裕はなかった。っていうかついで(笑)ってなんだ殺すぞ。
「やっぱ最初に初心者拾って、
「魔法使いがいないから次回も魔法使いを拾って同じことやるのがいいですわね」
戦士とヒーラーが地獄のような会話を繰り返している。
「お前ら~!☆」
「ハハッ!」
戦士からあざ笑うような乾いた笑いが出た。
「悪いなハル。ラスボスのドロップ品は絶対に装備しないとリセットできねえから、お前に押し付けさせてもらったぜ」
「想像以上に畜生だなてめぇ~☆」
「いいじゃねえか、初めてまだ一週間だけのキャラだったら今すぐキャラデリして作り直せばいいだけなんだからよ」
「そういう問題じゃねえだろ~☆」
じゃ!
とんでもない掛け声を残して戦士とヒーラーが天から降ってきた光に吸い込まれるように飲み込まれて消えた。
よくわからんクソみたいな呪いの装備品を左手の薬指に残して。
「ああああああいいいいつらああああああああああ!!!!!!☆」
フロア全体に響き渡るような絶叫の中、私は目の前で浮いている小さな指輪を全力で握りしめた。
全身全霊を込めて左手の薬指にはめ込んだ。
―― VITが激増しました。
―― VITが激増しました。
―― VITが激増しました。
殺す。絶対に、殺す。あらゆる手段をもって殺す。
あの腐れ廃人どもをどんなことをしてでも必ずキャラデリさせる。可能なら中の人もろともぶち殺す。この重婚したかのような左手の薬指に誓って絶対に殺す~☆ だめだ回想まで汚染されてきた~☆
「絶対にぶっ殺してやるからな~☆」
誰一人いなくなった中、私はなんかふってきたスポットライトみたいな光にびよ~んと飲み込まれながら絶叫していた。
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