第5話

「輪島くんが好きです。付き合ってください!」

「……悪い、俺好きな子がいるから」

 夏休み半ばの花火大会。あげはと僕と輪島の三人で屋台を回って花火を見て、タイミングを見計らって僕が席を外して、あげはが輪島に告白する計画だった。

浴衣を着ておしゃれをしたあげはが意を決して輪島に告白したものの、その恋はまたしても花火のように散ってしまった。


「わたしって魅力ないのかなあ」

「そんなことないよ」

「だったら、なんで……」

 花火大会の翌日、部屋に引きこもって泣き続けるあげはを懸命に励ますけれど、愛らしい瞳からは大粒の涙が溢れ続けていて、止む気配がない。気の利いた言葉のひとつでも言えたら……そうだ。

「あげは。これ、覚えてるか?」

 首にかけていたネックレスを外して、掌に乗せてあげはの目の前に差し出す。

「……小学生のときに色違いで買ったやつでしょ?わたしがピンクで周が青で……周、毎日それ付けてくれてるよね」

「まあ、気に入ってるからな。それでさ、僕思うんだけど」

 僕はあげはと向き合って、真っ赤に腫れた彼女の目をまっすぐに見つめた。

「蝶は幼虫からさなぎになって、やがて蝶として美しく羽ばたくだろ?あげはも同じだと思うんだよ」

「同じ?蝶と?」

「あげははまださなぎなんだ。僕は今のあげはもかわいいって思うけど、みんなはまだあげはの良さに気づいてない。あげははちゃんと魅力的だよ。あいつは見る目がなかっただけ」

「……ふふ、周がわたしのこと、かわいいだって」

「うるさい」

 自分の発言が急に照れくさくなって、ぷいっとあげはから視線を逸らす。

「ねえ、周。いつかわたしも綺麗な蝶になれるかな」

「……あげはなら大丈夫。絶対」

「励ましてくれてありがとう……周みたいな友だちがいて、よかった」

 あげはは目を瞑り僕の肩に頭を乗せた。瞳を閉じて、今、あげはは何を思っているのだろう。

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