第6話 亮平

「▶)◇❫◆▪/)」

「▶▪◇▩▶◆▩◇?」



「「「?!」」」


「ねぇ、あなた、今変な話し声が玄関口の方から聞こえない?」

りかが、亮平の裾を引っ張って言った。

「ああ、聞こえたな。外国人が家の前を通り過ぎたんだろう」


「父さん、それ、違うと思う。きっと異世界人だよ!」

了が首を振る。

「そうか、異世界人か。タコみたいな奴らか?光線銃で、家を焼かれたら不味いな!」

「父さん、多分、番組違うと思う」


亮平は、スックと立つとそのまま玄関に向かって歩きだした。

りかが、心配そうに亮平を見送る。

「あなた、気をつけて」

「大丈夫、大丈夫、タコ焼きにしてやるから」


「父さん、タコから離れた方がいいよ」

了は、ズレた感覚の亮平に呆れ顔で言った。



◆◆◆



◆亮平 視点


とは言ったものの、やはり知らないという事は怖いものだな。

私は、しがない都の出納課の職員だ。

正直、お化けとか、宇宙人は職務外だな。


しかし、若いというのはこれほど体が楽なのだな。

持病の腰痛は嘘みたいに無いし、先日治療した金歯が自前の白い歯に変わってる。

かみさんも十八くらいに若返って、久しぶりに息子が反応したら、かみさんにビンタもらったけど、なんで?


ああ、そうか。

俊の四十九日が、終わったばかりだった。

はぁ、俊、今頃、賽の河原で石積みしてたら不味いな、あとで蜘蛛の糸でも垂らしてもらえるよう、お釈迦様にお願いしないと。


おっと、考え事をしてたらもう、玄関だ。

さて、出たくないが家が大事、ローン金利は賢く借り替えと、鍵を開けて、と、ガチャッ

キイッ扉を少し開けて、と

「………………」


「?!▩▶◇◆▩▪▶/)▩!」

「▶(/▽◇▩❪!!」


バタンッ、扉を閉めた。

「………なんか、コスプレイヤーがこっち指差してるんだけど、危ない人か?」


んー、どうするか?

このまま、知らんぷりしたいが、あのオモチャの剣で叩かれたら、痛いよね?

ん?はて?なんかドアの下から、布がはみ出してるだが?

視線が門の入口のコスプレイヤーにいってたから、足元を見てなかったよ。

ドアの前に、なんかあるのか?

仕方ないもう一度、ドアを開けるか。

私は、ゆっくりと足元を見ながらドアを開けた。


「?な、なんと、幼い子供が血を流して倒れている?!」

いかん、私としたことが、この子に気付きが遅れるとは?!

私は、すぐに子供の救護に取りかかった。

抱き上げたが、小さな胸にナイフが刺さっている?!

た、大変だ!すぐに応急処置と救急車を呼ばなければ!

私は、子供を抱いたまま、踵を返して家の中にもどろうとしたが、同時にコスプレイヤー達に怒りを覚えた。

なぜ、救急車をよばない?!


「◆▽◇▪▩)?!」、「❪『◆/❪)◆▽!!」


うるさい、また、指差ししながら門の外から変な言語で怒鳴ってる?!

なんだ?門の何もないところを、壁がある仕草のパントマイムをしている?

ふざけた連中だ。


「あんた達、私の家の前で子供の救護もせずに変な遊びは止めろ。見たところ、外国人のようだがハロウィンなら渋谷に行け!」


「◆)▩?」、「▩▶/▩▶◆』!!」


駄目だ、言葉が通じてない。

警察を呼ぼう。

私は、急ぎ家の中に入ってリビングに向かった。



◆◆◆



◆高木家リビング


「戻った!母さん、この子供を見てやってくれ」

「きゃあ?!、あ、あなた、その子、胸にナイフが!」

「とりあえず、ソファーに寝かせるから応急措置を、了!救急車だ!あと、警察も呼べ!」


家内が幼稚園教諭のかたわら、看護師の資格を持っていて助かった。

さすが、手際がいい。


「父さん、異世界だから電話使えないよ?」

了が、行きかけて振り向く。

呼べ!」

「…はい」

了が部屋から出て行った後、母さんが言った。


「救急車は期待できないわ。とりあえず、ナイフを抜かないと。あなた、救急箱を持ってきて」

「わかった!」

私はすぐに納戸に向かい救急箱を掴むと、急いでリビングに向かった。

「きゃあ!」

む、母さんの悲鳴?、「母さん!どうした?」


私がリビングに戻ると、子供が金色に光っていた?!

「母さん、こりゃ、いったいなんの手品だい?」

「わ、わからないの。ナイフを抜いたらこうなったのよ!」

「父さん?やっぱり電話自体が使えないん、え?な、な、何、これぇ?!」

茫然と見つめる私たち三人の前で、子供の身体はさらに強い金色の輝きに包まれた。


やがて急速に光は収まり、子供は何事も無かったようにソファーで寝息を立てていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



◆ヘーゲル視点


「シルビアを見つけた?でかした!して、どこに連れてきた?」

私が屋敷を出て、馬上から指揮をとっていると、二人の領兵が駆け込んできた。

そして、シルビアが見つかったとの報告で安堵していると、報告を上げてきた兵士が続けて話した。


兵士A「そ、それが森の中に屋敷?がありまして、その屋敷の者に奪われました!」

「屋敷?、たかが平民の小屋だろう?踏み込めばいいではないか」


兵士A「そ、それが、見えない壁のようなものに阻まれて門から先に進めないのです」

「はぁ?なにを言っておる?そのような事があろうはずがなかろう!」


兵士B「いえ、間違いなく自分も確認しております。確かに門から先、進む事が出来ませんでした」

なにを言ってるのだ?そんな事があるわけがない。

だが、兵士二人で私に嘘をつく理由もない。


むう、王都の魔法使いの中に幻の魔法を使える者がいたと、かつて聞いた事がある。

まさかな、はぐれ魔法使いの隠れ家か?

なら、全兵士を向かわせるまでだ。

「よし、お前達、案内いたせ。これより、全領兵は森に向かう!」


シルビア、逃がさんぞ。

明朝までに必ず、屋敷に連れ戻す。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



◆高木家リビング

シルビア視点


「それで?お嬢さんはなんで、ウチの玄関口に倒れていたの?、あと、門の前に刃物を持ったコスプレイヤーの気狂いが居たんだけど、あれは何なの?」

今、目の前に10代後半と思われる男女と、5歳くらいの男の子がウチのソファーに座っている。


それで、美人のお姉さんに質問を受けてる状態。

しかも、三人とも黒髪、黒目、そして、日本語を話してる。

間違いない、日本人だ。

だけど、なんでこの三人、高木家にいたんだろう?


あれ?この三人、若いけどなんか、父さん、母さん、了に似てる?

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