第15話 竜創造

俺は今、とても退屈していた。


「そろそろ何かしましょうよぉ神様ぁ」


ベッドで横になりつつ、創った便利ペンダントでアダムの光景を見ている俺の身体全体をガブリエルは、腕を動かし揺らした。


「だってさぁ。なんか面白いことしないんだもん。アダム」


活動しない言い訳のように、ガブリエルにそうふてくされる俺。


見守っていると約束した以上は、アダムのことを見ておかないといけないという義務にかられ、ただぼーっと映像を眺めていた。


この昨晩創った便利ペンダントは、軽く触るだけで、瞬く間にリアルタイムのアダムの光景が上空、正面、後面から観れるものである。

立体的に表示された映像は、もはや地球の技術はとうに超えるものであった、この本の力は偉大である。


「…さっきから歩いてるだけじゃないですか。何か面白いことでも起こるんですか?」


仕方なしに、ガブリエルは俺の身体から手を離し、一緒に映像を眺める。


「いや別に起こらないと思うぞ。でもちょっと足痛そうかな」


「もう5日ですもんねぇ。よくりんごだけでここまで行けるもんですよ」


ガブリエルもアダムに関心している。

確かに5日間、睡眠時間も削って歩くアダムに、少々、同情してきてしまう。

というか俺は結構鬼畜の所業をしているんじゃないだろうか。


「可哀想になってきたけど、赤い石を使ってくれないことにはなぁ」


「そろそろご褒美でも用意したほうがいいんじゃないですか?」


急に優しさを見せるガブリエルに驚きが隠せなかったが、こいつ天使だったな。

ガブリエルの言うことも最もであったので、俺はご褒美と評して、イヴの制作を始めることにした。


「何か描くんですか?」


上半身を起こした俺に、本を手に取るよりも早くガブリエルが尋ねてくる。


「お前が言い出したことだし、もう一人、人間でも創ろうと思って」


その俺の言葉に、何を思ったのかガブリエルは顔を赤くしながら身体をぐねらせる。


「そ…そんなぁ…まだ昼ですよぉ…急に夜伽の話なんて…」


何を言っているんだこの変態天使は…。

今から子供を産んだって、アダムと出会うまで1年ぐらいかかるだろうが…

しかもあのアダムに子供を育てろとか苦行が増えるだけだろ…

大体俺は、ルシファーとしかしてないし…。


いや待て?前にこんなことになった時はお預け食らったよな。

ガブリエルにその気があるんだったら今ヤってもいいのか?

俺はガブリエルを見つめると、肩に手をかける。


「いいのか…?ガブリエル…」


「ひ…ひゃい…」


俺の行動にびっくりしたのか、冗談っぽく言っていたガブリエルも

可愛らしい声を上げる。

まあこういうことをしてからでもイヴを創造するのは、遅くはないだろう。

俺はガブリエルの服に手をかけると、するするとガブリエルの服を脱がしていったのだった…。



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よし…早速、イヴの制作でもしていこう。

俺は思い立ち、いつものカウンター席でイヴを描いて行く。

アダムの恋人となる予定の女なので、あのイケメン顔に見合った女を描いていく。


あっという間に描き終えると、本を閉じ、アダムの映像を眺める。

そこには、アダムが登場した時と同じく光の柱が立ち、中から女性が現れる。

アダムは驚いた反応を見せるも、その女性に話しかけたのち、共に行くことに決めたようだ。


よしよし…、まあこれでしばらくは大丈夫だろう。

俺は、アダムの映像を切り、いつの間にかテーブルに置いてあったコーヒーを手に取る。


「そういえば、最近あいつら見てないなぁ…」


「あいつら…と申しますと?」


どこからともなく現れたメイド姿のルシファーが俺に話しかけてくる。


「お前の姉とメフィストだよ。この前、地界に行った時もいなかっただろ?」


「確かに…そうですね」


何かを知っているような素振りを見せるルシファーの顔に、俺は思わず問い詰める。


「何か知ってるんだったら言ってくれ。俺あいつらの生みの親でもあるんだからさ。どこかで野垂れ死にしてたら気分悪いし…」


「…姉上は、森でサバイバルをしているようですね。いつか帰ってくるのではないでしょうか」


「サバイバルって…まだ何もないぞ…少し描いてはいたけど…あぁ木の実くらいなら生えてるか」


俺はこの前の下界の様子を思い出す。


「姉上とは定期的に会っているので、ご心配なさらず。それに姉上なら食べなくても1年は生きていられるでしょう」


まあ仮にも悪魔だし、俺が心配するまでもないか…。

俺は肘をテーブルの上に置き、手のひらにほっぺたを乗せ、コーヒーを啜る。


「メフィストは…。今は砂浜で遊んでいますね」


ガキか…。いやまあ、あいつも悪魔だから死ぬ心配なんてないだろうけどさ。


「寂しくもあるなぁ。子供に独り立ちされた親みたいな心境だ」


「それほど心配なのであれば、呼び戻しましょうか?」


「いやいいよ。皆自由にやってるんだし。邪魔するのもあれだし」


ルシファーが何かアクションを起こさない限り、抗争は起きないという設定にしたものの、天使は悪魔を嫌っているのは事実だ。顔を合わせれば喧嘩になるに違いない。

そう考えた俺は、バッグから取り出した、アイデアノートをぱらぱらめくる。

魚や木、動物なんかはぼちぼち創るとして、次に創るアイデアを思い浮かべる。


(この前、動物創ったりしようとか張り切っちゃったけど、今日は先にドラゴン創ろうかなぁ)


俺は、アダムとイヴのことも忘れ、本を開き、子供の頃、思い描いていた自分の中で一番かっこいいドラゴン像を本にそのまま描いて行く。

ルシファーは俺が本に何か描き始めたとわかると、いつの間にかどこかへと消えてしまっていた。


(ドラゴン…あれだな。それぞれの地域の東西南北に配置するとして…

ああ…せっかく4つの方角に配置するんだから属性もつけるか…)


俺は4体のドラゴンを白紙の見開きの2ページに描いていく。


(火、水、風、雷とかかなやっぱり。いや、氷も捨てがたいな…どうせなら水と氷どっちも使えるって設定でいいか…)


大体の下書きを終えると、それぞれのドラゴンの上に、火竜、風竜、雷竜、氷竜と書き、それぞれの設定を書いていく。


(火竜はあれだ。やっぱりベタに好戦的とかでいいだろ。あと、神と天使が嫌いとか書いておこう。で、自分のことを炎竜とか名乗っていることにして…)


風竜も火竜と同様に同じような設定に、付け加えて、別の設定も書いて行く。


(雷竜は、神と天使のことは気に食わないけど、傍観的って感じにしよう。あまりにトラブルを呼びすぎてもあれだしな…氷竜だけは俺達の味方ってことにしとくか。

味方なんだし、他の竜より濃い設定にしておこう。)


いつかこいつらが、勇者とかに討伐されたりとかしたらファンタジーっぽくてとてもよい感じだよな…。

そんな希望に満ちたものを全て2ページに描きこむと、本を閉じる前に、新しいページを開き、それぞれのドラゴンの名前と氷竜にもう少しだけに設定を付け足す。


(火竜、風竜、雷竜に比べて強い竜のため、氷竜がいるうちは、天界、地界ともに手出しはできない。氷竜は4大竜の中で唯一のメスであり、人が好きでよく人に化け、人間の街に遊びに行ったりすることもある)


こんな感じかな。まだ人間の街ないけど…

俺は大方4体のドラゴンの設定を見渡し、本を閉じる。

すると、物凄い風と共に冷たい冷気が後ろのほうで漂う。

その冷気に部屋の中はたちまち耐えられなくなり、氷り始める。

俺は思わず顔を覆いながら、後ろを振り返ると、そこには、綺麗な白い髪をした12歳程度の女の子が佇んでいた。

















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