ビーヘイバー いじめを止めるハチと音楽

porksoup (ポークスープ)

 子ども編 いじめ小学生と毒バチ

          


 鎌倉市立温泉小学校2年1組の田畑桃は、同じクラスの松谷ひかりと佐田ひなたに彫刻刀を投げられていた。それぞれ背中と肩まで黒髪を伸ばし、紫と黄色のブラウスとスカート姿で、大声で笑いながら桃の連絡帳を破る。

 (去年行っていた都立の小学校でも同級生だった6歳の男子、純也の靴下に給食で出されたトマトジュースをかけたことがあり、温泉小に転校してきた)。


 緑色の半そでシャツと茶色いジーンズを着た黒い短髪の田原直美が、彫刻刀を彼女の机の上に置きながら桃の肩をたたいて「大丈夫?」と声をかけた。彼女は国語と体育、英語と音楽が好きな図書委員で、休み時間は図書室で本を20冊読む幼なじみだ。

 突然、教室に怒りマークの形になった20匹の女王バチが入って来て、ひなたとひかりのまわりに集まった。「ごめんなさい!ごめんなさぁい!」と泣き出し絶叫する二人の腕に5本ずつ刺さり、失神した。

 

 保健室の前には同級生や下級生にいじめをし、毒バチに腕を刺され失神した全学年の男女40人が倒れていた。保健教師たちが学校の倉庫から出した段ボール箱をハサミやカッターで切って開け、ゼリー飲料や保冷剤を保健室の机の上に置いている。


 5年2組の佐原博人に暴言を送った後に毒バチに腕を刺され、腕の痛みと発汗が続いていた11歳の黒木美奈と伍代純一はスマートフォンを鎌倉警察署にあるハンマーで壊され、佐々木秋次郎に怒鳴られた。

 20問の漢字テストを終えた二人は博人の肩を軽くたたき、「私、2年前純一と一緒にスマートフォンであなたに暴言を20件送った」「ごめん」と謝る。博人は愛読している有川浩著 小説『図書館戦争』をかばんに入れ、無言で昇降口に向かった。

                 

            

 「直美ちゃん。ひざから血が出てるよ」桃はブラウスのポケットから出したばんそうこうで直美のひざの傷口を覆う。

 「ありがとう」直美が桃と一緒に昇降口で靴を履き替えていると、博人が二人の肩をたたき「ひなたとひかりは熱が出て早退した」と声をかけた。「私は田畑桃、こっちは田原直美ちゃんです」

 「俺はテニス部の佐原博人。源泉中学校や銭湯高校でも、いじめをしていた新入生や先輩は毒バチに腕を刺された後に発汗や腹痛があり、夜は眠れなくなる人が多いらしい」

 博人はグレーのワイシャツとズボン、ダークグリーンのベストを着た黒い短髪の男性音楽教師田原亮介と、『リート新聞』の発行者で背中まである茶髪を青いゴムで結んでいる妻の美月を連れて来た。

 直美は父親と同じ黒い切れ長の目で両親を見つめる。「パパ。ママ」「直美、ひざをケガしたって聞いたぞ」亮介が娘のひざに貼られたばんそうこうを見ながら言う。

 直美は「うん。桃ちゃんが手当てしてくれた」と答える。二人は桃に「ありがとう」と言った。


 


 


 

 

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