第14話 ナマケモノはこちらです

遂に考査前日となった。

課題も順調に終わったし計画通りでまずまずといったところだ。

(さて、そろそろ最後の復習をしよう)

俺は休み時間にも関わらず、ノートを開いた。

いや正確には開こうしたのだが、俺の両腕はまるで上がらなかった。

理由は明確。

そう。こいつらである。


「神様、仏様、田中様。どうか俺に天才的な知能をお与えください」

「明日がテストだなんて知らなかったんだよぉぉ。何とかしてよ、たなえもーん……」

テスト前日になるとこの2人、佐野と前野は毎回こうして俺に頼ってくるのだ。

もはやテスト前の恒例行事となってしまっている。

頼られることは大抵嬉しいのだが、この時ばかりは面倒でしかない。

「2人ともそろそろ学習しろよ。前日に来られてもどうしようもないんだって」

そう言っても、ヤマを張ってくれるだけでもいいから! といって全く離してくれない。

それに隣の席からは、謎に煌めいた視線を向けられていた。

一体水瀬さんは何を思っているのか、未だに全く読めない。

一先ずこいつらは邪魔なので俺は冷たい視線を送りながら、渋々最低限暗記すべきところを教えて追っ払った。


ようやく腕が軽くなったので復習を始めた。が、全く集中できなかった。

今度は佐野でも前野でもなく水瀬さんの視線だ。

まだ俺に煌めいた視線を送ってきていた。

直接なにか邪魔をされているわけではないが、やりにく過ぎる。

「えーっと、水瀬さん? どうかされましたか?」

そう尋ねると彼女は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。

おっと。どうやら無意識だったようだ。

そして、しどろもどろになりながら

「私にもそのテストのヤマを教えてほしいなって。ダメかな?」

と言った。

最後のダメかな? の破壊力がえげつないが、俺はそれよりも内容の方が気がかりだった。

(水瀬さんって本当に噂通りなのか? この間象でも分かるとかいう本借りていたし、実は佐野たち寄りなんじゃ……)

そう思いながらも、俺はさっきとは打って変わって快く教えたのだった。


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