第5話 ミーハー野郎と豆腐の俺②

「そういえば水瀬さんとそろそろ仲良くなったか?」

と佐野は聞いてきた。

「この前言っただろ? 一度挨拶をしたくらいで話したことはないんだって」



そう、俺は席替えをした次の日の朝、勇気を振り絞って挨拶をしたのだ。

すると「……うん」と少し素っ気ない返事が返ってきた。

ここで絹ごし豆腐メンタルの俺は力尽きてしまった。

もし笑顔で「おはよう!」などと言われたものならば、天に飛び立つくらいに喜ぶが。

この反応なら言わない方が良いだろうと思ったのだ。

(リベンジしてまたその反応だと、俺が違う意味で天に飛び立ってしまう可能性があるので辞めた)


すると佐野は「じゃあさ。何故かチラチラ見てくるって言ってただろ? その時話しかければいいじゃねえか」と助言してきた。

見てくる理由が分からない以上、下手に動かない方がいいように思っている節もあるのだが、話のケリがつかないので俺は「まあそのうちそうするよ」と適当に流しておいた。

「絶対しないやつだろ」

と、的確な指摘を受けたが俺は何も聞いていない。

何も聞こえてなんかいなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る