第2話 唯一の友達

俺の席は窓側の1番後ろだった。

夏本番のギラギラとした日差しが燦燦と降り注いでいたせいか、椅子に座るとほんのり温かかった。

(この温さ覚えが……! そうか、ウォシュレット付きの便座と同じだ!)

いや、俺何を思ってるんだ。

暑さで頭までいかれたのか。

でもこれは凄く便座っぽいな、などと脳内で自分に自分でツッコミを入れていた。


暫くして鐘が鳴り、佐野がダッシュで俺の席へ突撃してきた。

「なあなあ! 間近で見た感想どうだった?」

俺の頭に(?)はてなが浮かぶ。

間近? あぁ、水瀬さんの事か。

「そういえば見るの忘れてたわ。便座のことしか頭になかった。すまんすま__」

ガンッと頭から鈍い音がした。

くっそ、良いチョップを食らわせやがる。

「やめろよ、普通に痛えわ」

そう言いながら顔を上げると、佐野も顔をしかめながら手をプラプラさせていた。そして俺に

「お前次は絶対見ろよ⁉  んで、いい感じに話せるようになったら俺に紹介しろ!」

と言い放ってドカドカと歩いていった。

そして3歩ほど歩いた後、振り返って一言。

「便座ってなんだよ⁉」

流石俺の友達。

佐野はなんだかんだ言って良い奴だと改めて思った。

(水瀬さんを狙っているみたいだが)




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