第6話 今がどうかってことよ!

 大晦日の朝に帰って来た。深夜の時間帯で寒かったことと、魚を扱う仕事だったので生臭さくて早くお風呂に入りたかった。服も洗濯したかった。

「モグ、ただいま」

「あ、お帰り。今日仕事だったの?カレンダーに丸がついてなかったからポコチンチンに行ってるのとばかり思ってた」

「ポコチンチン?パチンコのこと?ポはどこから来たの?違うよ。年末年始の短期のバイトを入れたの」

「あっ、そう。……いいとこもあるのね!」

「おまえね~一応養ってるんだからね」

「そんなのわかってるわよ。わかって言ってのよ」

「ねえ、聞いてよ。ス―パ―の仕事で寿司と刺身の盛り合わせを作る仕事だったんだけどみんな段取りが悪くていやになったよ」

「はい、でた。いい、一緒に仕事した人は派遣社員でしょ?あなたは?」

「派遣社員」

「でしょ。同じなの。派遣をバカにしているわけではないの。立場は同じでしょと言いたいの。段取りが悪ければみんなで仕事が上手く流れるようにするのが仕事でしょ」

「はい」

「私、みんなの会話聞いて知ってる。いい大学でてる。超難関国家資格も持ってる。目的を果たす能力が秀でてるのは知ってるつもり。でもそれがなによ。大切なのは今がどうかってことよ!」

「……1」

「……2」

「……3」

「……4」

「あなたは本当に犬ですか?」

「まあ、そこらの犬とは訳が違うわね」

「やはりね。おっしゃることが犬離れしている。犬離れ?そんな言葉ありました?発明ですよね?」

「まあ、新しい言葉ね。私にしか使うことないから使用頻度は下がるわね。でも、まあ、発明ね」

「ウンチとオシッコをする場所もすぐにマスターされたんでしょうね?」

「まあ、同期では一番だったわね。ちょっと私の右に出る奴は後にも先にも現れないと裏で言ってるのを耳にしたわ。別に何とも思わなかったけどね。フン、みんな上流階級に貰われていったわ。そのへんの判断も教えられていたからね。何だと思う?」

「なんでしょうね?洋服ですか?」

「違う。時計よ」

「時計?」

「うん。ロレックスは品がない。まだオメガがまし。オリスなんか付けてる人はセンスがいいわね。でも決めては国産なの。日本で売り上げが一番なのはセイコーではなくシチズンだからね。セイコーはグランドセイコーはいい造りしてるけど自動巻は月差10秒はでるの。クォーツの方がまし。それに比べてシチズンのアテッサは電波、ソ―ラ―、チタンで手間要らずよ。でもねシチズンのなかでもプロマスターというレ―ベルがあって10万円くらいなんだけど最高ね。そんな時計をガツガツ使っている人が時計を知ってる、幾つも所有している、多分ロレックス、パネライなんかも持っている可能性が高いの!」

「……すごい知識だな」

「こんなのなんでもないわよ」

「で、今、おまえが住んでる部屋の広さは?」



「………1K………」

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